京料理とおもてなしVOL.4

土居好江

京都では当たり前のように頂く京料理も、海外や全国から入洛される方々には、とても繊細な心配りのある料理だと申されます。数年前、プライベートジェットで訪日されたイギリスのご一家をご案内した時、京料理の美味しさを褒められ、器、盛り付け、室礼、空間の心地良さに感動してくださいました。食後、お茶室で頂いたお薄の時間は、至福のひとときだったようで、何度も御礼を申されました。江戸時代の器に人間国宝作品の器等、最高のおもてなしでした。

 こういう老舗料亭だけでなく、京料理の料亭のおもてなしは、細部に見受けられます。京都駅ポルタにあるいつもお伺いしている京料理店がリニューアルオープンしたので、早速お伺いしました。東京からの来客や時間がない時は、いつも京都駅ポルタにある京料理店にお伺いします。

 食事が終わって、爪楊枝を頂きたいとお願いしましたら、写真のような千代紙に包まれた爪楊枝の籠に「またのお越しをお待ち申し上げております」と、一つひとつ手書きされた籠をお持ちになり、好みの物を選ばせていただきました。

いつも丁寧な暖かい接客で感心していたお店ですが、お手間入りの爪楊枝で一気に満足度が1000%になりました。ご当主のお人柄がお店に行き渡っているのが、よくわかります。

 京都では、こういうさりげないおもてなしが、いたるところで見受けられます。ある老舗京料理店にドイツ人をお連れした時のこと、京料理にはないステーキを、特別にコースに入れて頂き驚き、とても喜ばれました。ルールを外してでも、お客様がどうすればお喜びになるのかを、よくご存じで、「お肉が大好きなかたです」とお伝えしていただけですが、お店の粋な計らいで、こういうメニューをつくってくださったのです。

 伝統を重んじる京の料理人さんの粋なお計らいは、今も印象深いできごとでした。
以上

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