第二回おくどさんサミットに寄せて 前編
京都千年の究極のパワーグルメ・あぶり餅・一文字屋和輔 前編 土居好江
千年もの間、同じ製法で、日本人のパワーグルメとして食されているあぶり餅。平安時代一条天皇の御代、「ころり」という病気が流行っていた頃、やすらい祭を行い、今宮神社にお供えされた“おかちん(勝餅)”(餅)を参詣後に小さくとりわけ、自宅で食しました。その後、参道で振る舞われるようになったのです。
黄な粉をまぶし、味噌だれにつけて、串にさして火で炙ったあぶり餅を食すと、疫病を逃れたという噂がひろがりました。現在も無病息災、長寿健康の縁起の良い和菓子です。
ひえやあわを食していた時代、米をお餅にしたシンプルなスイーツでした。これが千年後の日本人の遺伝子をくすぐるのです。人間の五感に訴えかけるのでしょう。また、千利休が茶菓として用い、今でも千家のご用達になっています。
10年ほど前、Googleのお仕事で「マイフェバリットスポット」とい企画の京都編をコーディネートさせて頂きました。もちろん、あぶり餅一和さんにも登場して頂きました。世界同時企画で、ニューヨークやパリ、ロンドン、東京も紹介されたのです。その時、たしかニューヨーク在住の日本人の方が、「死ぬ前に食したい一品」と申されて、感動したことがあります。米文化の日本の遺伝子は千年前と変わらずに息づいているのだと痛感しました。
平安時代に創業された現存する日本最古の飲食店、あぶり餅一和では、千年以上、一品種のあぶり餅だけで商いを続けておられます。今もその作り方は変わりません。現在風に申せば、無添加、無着色で賞味期限はその日限りという贅沢な一品です。
京都生まれで、京都育ち。長年、京都に住んでいると京都の良さがわからなくなり、当たり前になってしまっていることが多々あります。外国人や他府県の方を、ここの茶店にお連れすると、驚かれ感動されます。
暑い時季にクーラーのない茶店を訪れ、文禄年間(1592年~1596年)に建設された茶店に腰をおろすと、参道から吹いてくる風が心地よく、当時から風の通り道を最大限に生かした心地良い風と空気感で、爽快な気持になります。井戸水を使ったお茶とあぶり餅に満足しました。
真冬の寒さは暖房でお部屋は暖かく、自然の寒さが身に染みますが、千年間日本人が食してきたパワーグルメを五感で堪能させていただきました。皆様も一和さんに足を運び、食してみてはいかがでしょうか。
次週 後編に続く