紅葉

紅葉 大滝伸一

吐く息が白くなる季節になると紅葉も最後のステージになります。彦根城の近くにに住んでいた時、毎日朝の散歩をすることを日課としていました。入場料が要る時間帯まで早朝の間は彦根市民に開放されていて、毎日、天守閣の広場ではラジオ体操が行われていました。私は彦根城を一周する散策をしていました。散策路には銀杏の木、楓の木々の紅葉が色づいてくるのを観察するようになりました。同じ幹から分かれた枝葉の葉の色づきの順番、最初に色づく葉、最後落葉する葉の順番はどうなっているのだろうとの想いを持って観察していました。
太陽の光を長く浴びた、早く日の目を見た葉から紅葉が進むことが観察によって分かりました。紅葉の季節に、道に迷った時は紅葉状態が方角を示す目安になります。
人生、会社生活にも同様のことがあるのではないでしょうか。開発業務に携わってきた者にとって、誰かが先頭を切って未知の領域を開拓することが求められます。最初に紅葉する葉は先人に例えられるかもしれません。或いは年若くして脚光を浴びて輝いた人々に例えることもできます。
紅葉の順番が遅い葉は、脚光を浴びないで、耐え残った人生を送っているとも例えられます。
人生で、何れの例えに近いステージなのか、時の流れによって変わっていくものかもしれませんが、紅葉をこの晩秋にも一年を振り返りながら来年のことを考えています。

 

以上

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