1万円の観光税は高いのか、安いのか≪1≫ ~観光税の使い道・おこしやすプログラムの創設と新たな観光のご提案 (Welcome Program) ~

土居好江

 江戸時代元禄の頃、金閣寺の入寺料は10人分銀2匁を払って拝観したと『西遊日記』(司馬江漢)にはあります。すでに名所化が進んでいて、常に京都は最先端を走っていました。

 こんな笑い話があります。地方から京都観光に来て、嵯峨大覚寺に来た時に「ここはなんと申す所か」と聞いて「これは御門跡」とお寺が答えると「三文の関に負けて、見物はなるまいか」とねじ込んだという。観光客は「五文の関」と思い違いしたという。この笑い話は、この頃から入寺料を取るお寺があったと推察できるのです。

 京都の観光都市化は江戸時代のおかげ参りで爆発的に参詣者が増え、一年で300万人が移動した宝永2年(1705)頃から、京都にある寺社の総本山への参詣も増えてきました。

 識字率も高い江戸時代の庶民の楽しみは未知の知識欲を満たすことであり、この頃から京都の名所案内記が数多く出版され、名所・名産が誕生し広く知られていきました。

 21世紀の京都観光は、ある意味で自然と調和した歴史文化を体感する都市としての観光かもしれません。観光都市化した知識欲を満たした江戸時代の観光発祥から、現在の高度な科学技術のベンチャー都市でもある産業都市京都と、文化歴史の詰まった観光都市京都、盆地という特殊な地形や気候を活かしたモノづくり都市、京都の良さを体感できる観光も、新たな視点の観光をご提案したいと、口伝で伝えられた奥深い京都の歴史や文化を合わせてご紹介したいと京すずめでは、常々考えています。

 カルフォルニアの友人は「2024年は円安の影響もあり、本当にたくさんのアメリカ人が日本へ観光に行きました。友人が勤務する病院の患者さんの1/3くらいの人が日本へ行ったようです。みんな大満足されたようで、また来年も行きたいと言っていました。京都オーバーツーリズムの問題が出て来て大変ですね。もっと観光税を徴収すれば良いのではないか」と申されています。

 プライべートジェットに置くアメリカの雑誌社の編集者をご案内した時、「京都は富裕層がお土産を買うお店がない」と仰り、穴場をご案内した時、「今度日本に来るときは、まず自分自身が貯金をしてここに来たい」と感動されていました。京都は奥が深くて発掘できるものが、まだまだ眠っています。

 宿泊税を京都市が値上げするということで賛否両論が起っています。平日でも観光客が多い京都。1月中旬の平日の朝、清水寺方面の京都駅のバス停は長蛇の列でした。最後尾というプラカードを持った方が、「平日の観光特急バスはありません」と申され、私は行列に加わりました。

 平日でもインバウンドの観光客はどんどん入洛しています。2024年の海外からの訪日客は3686万9900人(速報値・1月~11月)、消費額(速報値)で8兆円を超えたという。観光客の全員が入洛されると、毎日10万人の観光客が京都に滞在される計算になります。京都市の人口143万人の7%に該当します。訪日客6000万人を目指すと、10%を超えることになります。

 コロナ禍前の2019年より約500万人も増えています。そこで、オーバーツーリズム対策で悩む京都市は、宿泊税の増額を予定しています。2018年10月1日に施行された京都市宿泊税条例 (宿泊税)の第1条 国際文化観光都市としての魅力を高め,及び観光の振興を図る施策に要する費用 に充てるため,地方税法も宿泊税 を施行しました。

 2025年には200円~1000円だった宿泊税を最高1万円まで引き上げると京都市は発表しました。この1万円が安いのか高いのかを、海外の方や京都ファンの方にお聞きすると意外な声がありました。また、歴史的にも、京都は観光先進都市として、いろいろな取り組みがありました。

  観光客は京都市民が納税している税金の恩恵を無料で受けるのではなく、ある程度負担するのが理にかなっている考えであると思います。下水道、交通機関の利用等、京都市の収支に関係すると考えると、京都市の人口と観光客の1日の平均人数比で宿泊税を決めるのが、理にかなった公平な決め方のように思います。京都市の人口の10%に相当する人が観光客として滞在する場合には、京都市民が納めている税金の10%に相当する金額を宿泊税にするのが公平な税負担であるのではないでしょうか。1万円の計算根拠をしていただければ安いのか高いのかが明白になります。

 オーバーツーリズムを軽減する為に宿泊税を上げるような意味合いに伝わってきますが、観光客の訪問先の分散できるような官民での取組を進める事も必要だと思います。京すずめからも今後色んな提案をしていきたいと思っています。

(次号につづく)

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