鱧月

7月祇園祭は鱧月と呼ぶ京都
土居好江

3年ぶりに祇園祭が開催されます。7月は祇園祭一色です。京都では7月を鱧月とも呼びます。7月に鱧を京都で頂く理由は、江戸時代に遡ります。鱧は生命力が強く、水なしでも、浪速から京へ生きたまま運んでくることができました。

鱧の語源は食む(はむ)だそうです。鋭い歯で何にでも食らいつく、どう猛で生命力が強い魚です。梅雨明けの頃、脂がのっていて美味しいです。

沢山の魚が獲れる地方では、出汁をとって捨てていた魚が鱧でした。京都の料理人は、そんな捨てるような魚も、工夫を重ねて、美味しく食す方法を生み出しました。それが鱧の骨切りです。

京都では鱧の骨切ができて一人前の料理人であると言われるように、捨てるような魚を美味しく調理できて一人前と言われています。

江戸時代の錦市場の魚屋さんの絵図に鱧が並んでいます。祇園祭の7月には八坂神社の裁量で鱧が京都でも買えたようです。それで、夏に鱧を食するようになったとも言い伝えられています。

京都では暑い夏に長いものを食すると、精力がつき元気になると言い伝えられていて、鰻も良く食されています。

どういう訳か、熊本県(細川藩)の料理人が鱧を料理して提供していました。京都が鱧料理の本場ですが、江戸時代から熊本の料理人と京都の料理人が交流していたのではないかとも、伝えられていますが、確たる証拠はありません。

7月の祇園祭でもてなされた鱧料理は、鱧のおとし(湯引き)・鱧の造り・鱧の葛だき・鱧しゃぶ・鱧寿司・焼き鱧・揚げ鱧などで、祇園祭を鱧祭りとも言われるようになったようです。

鱧は東京・築地市場と比較すると京都で約10倍の取引量(年間1,000トン前後)があるとも言われ、初夏から秋に掛けての取引量は全国トップになるようです。

特に祇園祭の宵山(前祭)が行われる7月14日から16日頃から急増し、山鉾巡行(前祭)・神幸祭が行われる7月17日頃にピークを迎え、1日10トン近く取引されることもありました。

鱧は小骨が多く、鱧を美味しく食べる為に1センチに7、8回切り目を入れる骨きりが生まれました。鱧には骨きり専用のハモ骨切り包丁も存在します。暑い夏、皆様も鱧料理をお楽しみください。
以上

 

Pocket