十五夜(2023年9月29日)と十三夜(2023年10月27日) ~中秋の名月と桂離宮~
土居好江
月が最も美しく輝く時季が中秋の名月の頃です。2023年の中秋の名月は9月29日になります。毎年、日が異なるのは旧暦で割り出しているからです。秋は空気の水分量も月の高さもちょうど人類が月を観るには絶好の条件です。
月を愛でるためにつくられた桂離宮や銀閣寺は拝観時間がお昼なので、月を観ることはできませんが、特別に年に一度、桂離宮観月会が開催されています。
申し込みは終わっていますので、来年、是非、ご応募ください。今年は十三夜(中秋の名月から1ヶ月後)に開催されます。
十三夜は日本独特の風習で平安時代からはじまったと伝えられています。
中秋とは秋の真ん中という意味です。旧暦で秋は7月から9月でした。平安時代から貴族が中秋の名月を観賞するようになり、京都では、お月見の名所が沢山あります。江戸時代にはいると、収穫の時期になるこの頃に収穫した芋などをお供えしてお月見をするようになりました。
現在ではお月見団子を中秋の名月にお月見団子を頂きますが、中国では月餅を頂くようです。
桂離宮は月の名所といわれる桂に江戸時代、50年かけて建設されました。月波楼(げっぱろう)」、や月見台、浮月(うきづき)、の手水鉢、「歌月」の額、「月の字」の引き手など、月にまつわるものが数多くあります。
古書院から突き出た竹簀子張り(たけすのこはり)の月見台は中秋の名月が真正面にくるように設計されています。
その名の通り、月見のために建てられた茶屋「月波楼」。屋根裏は船底のように組まれ、茶屋そのものを舟に見立て、舟上から月を眺めている気分に浸れるのです。
天文学に長けていた当時の智恵に驚きです。創建当時は桂川と桂離宮の池の水位が同じで、舟で桂川からも月を眺めていたようです。
桂離宮にも何回も拝観にお伺いして、お伺いする度に自然を最大限に美しく見せる庭園の作り方に感動しています。
また、随分昔に銀閣寺の月見の宴にお伺いさせて頂いたことがあります。その時は曇り空で月を観ることはできませんでしたが、月を観るための庭園、書院の素晴らしさを体感することができました。
昔はお月見団子を買うと、ススキを下さる和菓子屋さんがありました。ススキはお月見にススキを飾るのは、ススキの鋭い切り口が魔除けとなるからです。茎の中が空洞で、ここに神様が宿ると信じられていました。こういう意味も込めてススキを飾るのです。
日本人は昔から{もの」と「こころ」を区別しない文化がありました。水にも土にも植物にも「こころ」があると認識してきました。縄文人は土や草、虫ともお話できたとも言われています。そんな縄文人のように、お月さんと会話してみたいものです。
右脳の発達している日本人の耳は、虫の声が心地良く聞こえますが、欧米人には雑音にしか聞こえないようで、DNAが異なるのかと思うほどです。自然に寄り添う文化が日本に根付いたのは、独特のDNAがあったからかもしれません。天文学もキトラ天文図や、大将軍八神社の安倍晴明の天文図も驚くほど発達していたと感じます。宝物館で拝見した時の感動は、15年ほど前のことですが、鮮明に覚えています。
桂離宮の造営は江戸時代ですから、太陽と月の動きを知り尽くした当時の設計に脱帽です。科学が発達していなかぅた時代にも、このような知識があったことが本当に驚きです。これこそが、自然に寄り添い、自然と共に生きる暮らし方というものでしょうか。
以上