九条ネギ

土居好江

                                     スペインのネギ・カルソッツ 炭火焼のネギ料理

スペイン・バルセロナのレストランで焼きネギ・カルソッツを頂く 2018年3月

京都では、どこのご家庭でも、九条ネギを冷蔵庫に保存してあるものですが、この九条ネギは代表的な京野菜です。平安時代から九条あたりで栽培されていて、九条ネギと呼ばれています。『続日本後記』には現在の京都市南区九条あたりの「九条村」で、水ねぎの栽培記録が残されています。九条村は、ネギを栽培するのに適した土地であったのでしょうか。

もとは伏見稲荷大社が創建された和銅4年(711年)に浪速の国から、移植されたものと記録にあります。そして、現在の京都市九条周辺で品質の良いネギが栽培されたことから、九条ネギと呼ばれています。ちょうど、九条には東寺があり、弘法大師がこの付近で大蛇に追いかけられて、ネギ畑に隠れてことなきを得たことから、ネギに敬意を表す理由から、九条付近の農家は縁日にあたる21日にはネギを食さないという風習が言い伝えられています。もう1300年もの歴史です。

以前、京料理の料亭で江戸時代の伝承料理を習っていた娘が、江戸時代に食されていた「九条ネギとさつまいもの煮物」を再現してくれたことがありました。食するまでは想像できない味でしたが、意外にも美味しく頂いたのを思い出します。

九条ネギの緑の葉にはカロテンやビタミンBを多く含んでいて、味噌汁、すき焼き、うどん、蕎麦等に入れると風邪予防にもなります。最近では大根と九条ネギの漬物も販売されています。九条ネギ入りのだしまきも定着しています。

そして冬になるとスペインで食した焼きネギを思い出します。スペインの郷土料理でネギをそのまま30分間、炭火で焼いた素朴な料理カルソッツです。紙エプロンとビニール手袋を渡され、焼いたネギを割きながら、サルサ・ロメスコソースをつけて食べるのですが、とろけそうな柔らかさと甘みがあり、私がスペインで頂いた時、あまりにも美味しそうに食したので、お店のウエイターやシェフから、拍手が沸き起こりました。こんなに美味しそうに完食した人は、なかったそうです。やはり、普段から九条ネギを食べなれているからでしょうか。まるで九条ネギを食しているようでした。

きっと気候が京都と似ている産地なのでしょうか。カタルーニャ地方のタラゴナの郷土料理ですがバルセロナ市のレストランでも頂けます。人気の料理なので、予約をした方がよいでしょう。

京都でも九条ネギでこういう食べ方が楽しめて、食を通じた野菜友好都市が深まれば、野菜外交が実現するのではないでしょうか。

以上

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