京都の引力38 桜を愛でる京言葉 散る桜、残る桜も、散る桜 花嵐
土居好江
![]() 2026年3月10日撮影 元成徳中学校京都で一番早く咲く桜「春めき」 |
![]() 醍醐寺の桜の切手奥村土牛 |
「散る桜 残る桜も 散る桜」。これは江戸時代後期の禅僧、良寛(りょうかん)和尚の辞世の句と伝えられていますが、生と死を語る上で欠かせないものです。花のはかなさと花が咲いた瞬間から、やがて散りゆく運命を背負う と言い切っているようにも受け取れます。
「うらを見せ おもてを見せて 散るもみじ」。これも良寛和尚が晩年、よく口にしていた言葉とされますが、裏も表ももみじに変わりなく、もみじそのものという意味でしょうか。
桜の季節が参りました。京都では、早咲き桜(春めき)が京都では一番早く桜が開花しました。本日、2026年3月10日も、ほぼ満開でした。(写真参照)
京都府の花は、しだれ桜、京都府の木は北山杉です。有名な円山公園のしだれ桜は毎年楽しみなお花見のスポットです。
花が散る (flowers fall)とか、花が枯れる(Flowers wither)という多彩な日本語の素晴らしさは、花の散り際まで美意識を貫く表現が日本語らしいのですが、「花が散る」を英語に翻訳すると「flowers fall 」となります。日本語には花が散る表現は、いくつもあります。日本では花が咲くことも、花が散ることも楽しむという感覚があります。感覚を研ぎ澄ますと、聞こえてきたり、見えることがあります。日本人が古来より、散りゆく花びらの姿に「無常の美」を感じてきた証拠です。
特に京都では桜の美しさを語る言葉が沢山あります。また、桜の植物的な特徴として桜の花は、太陽に向かって花を開花させる他の植物とは異なり、鑑賞を誘っているように下向きに開花します。田舎では稲田にある桜の開花が農作業の合図とされています。堤防に桜並木が多いのは地中の根が針葉樹の3倍の範囲に張りめぐらせて堤防の補強をしているからだそうです。これらの事も併せて知ることで、更に先人の見識と美学に感動することでしょう。
桜の中でもソメイヨシノの桜は、花を咲かせるエネルギーは前年の春から夏にかけて葉を広げ、光合成を行い、光合成でつくられた糖は幹、枝、根にでんぷんとして蓄えられ、エネルギーを貯金します。そして、翌春、一斉に開花させます。ソメイヨシノの花が先に咲いて、葉が後から茂ります。これを先花後葉(せんかこうよう)」と呼びます。
梅や桃も同じタイプの植物です。桜の花だけを見ていると突然開花したように思えますが、実は一年も前から準備していたのです。
桜の中でもヤマザクラやオオシマザクラは、冬芽の中に花芽と葉芽がセットで入っていて、花と葉が同時に開くそうです。一方、しだれ桜に仕立てられることの多いエドヒガンは、同じように芽はついていても、『葉芽は開くのを抑えて、花だけを先に咲かせる種』だそうです。
ソメイヨシノは、大きな花を咲かせるオオシマザクラと、花だけを先に咲かせるエドヒガンを掛け合わせてできた品種です。結果、ソメイヨシノが引き継いだのは、「大きな花を、葉よりも先に咲かせる」というそれぞれの特徴でした。
これが「お花見に最適」となり、全国に広まりました。人間が自ら「花だけが先に咲く」という都合の良い桜を作り、それが日本中に広まって、「桜=花が先」というイメージが定着したと考えられます。実は葉桜が来年の「出来栄え」を決めるのです。
(次号へつづく)
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