京都のこころ Ⅱ  世界一のロケーションとは?   ~水辺と川辺が見える風景と静けさ~

土居好江

2024年9月28日撮影 渡月橋の上流 2020年5月4日撮影

 「日本人初のラツィンガー賞に外尾悦郎氏が受賞」という記事を拝見して、思い出しました。もう15年以上も前のある日、友人から「スペインから外尾さんがくるので、一緒にご飯でも、いかがですか」と嵐山の料理屋さんにお誘いを頂きました。

 外尾悦郎氏はスペインのサグラダ・ファミリアの彫刻家として世界的に有名な方ですが、私はお会いするまでは全く存じませんでした。外尾悦郎氏のラツィンガー賞の授賞式は2024年11月22日にバチカン宮殿で行われています。ご受賞は今年に入ってから知りました。

 平成12年に完成した「降誕の門」が「アントニ・ガウディの作品群」としてユネスコの世界遺産に登録され、平成25年にサグラダ・ファミリアの主任彫刻家に就任されています。実際にスペインでサクラダファミリアを見学した時、外尾氏の芸術性が京都で学ばれた土台があることに、不思議な感じがしました。

 15年前に「ここのロケーションは世界一ですよ」と、申されたことを思い出したのです。嵐山にある豆腐料理店・松籟庵の大広間の窓から見える大堰川(桂川)の風景を、世界一と申されたのでした。私は驚きました。いつも日常的に見ている風景が世界一とは。京都人は盆地に住み、山を365日、毎日見ながら暮らしています。当たり前の風景です。

 山辺と水辺も風景が同時に眼に入るロケーションで、静かな川の音と山の音が聞こえてくるような静けさを感じます。映画のシーンにも登場し、桜や紅葉の季節には予約が取れない程で一年前から予約される方もあるとか、大人気の料理屋さんです。

 階段を登り、門から敷地に入ると、まるで結界を越えて神聖な空気が漂い心地良い雰囲気になります。水辺の癒される空気、マイナスイオンが沢山あり、息をするだけでも身体が整うのを感じる場所でもあります。空気感はお金では買えないものです。最高のおもてなしが目に見えない空気となって、京料理の代表格の豆腐が身体にやさしく、心身を整えてくれます。

 こういう場の持つ空気が京都のこころをつくっていくのでしょうか。因みに「第一回京都への恋文表彰式」は女将さんのご配慮で、この松籟庵を会場にお借りして開催させて頂きました。改めて、心から感謝申し上げます。

以上

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