京文化の優しさ  

土居好江

 渡月橋2021年8月24日                        京都白川2023年9月9日

「第五回京都への恋文」の入賞作品を公表して、多くの方々からご感想等を頂戴しました。素晴らしい作品が多く、ご自分の人生と照らし合わせて、いつも拝読しているという、嬉しいご報告も頂戴しました。2009年から公募を始めてからすでに15年経ちました。この間、数多くの方々と交流させて頂いたことに、心から感謝申し上げます。

 この公募事業を進めさせて頂く中で、いろいろな方からアドバイスも頂きました。アメリカ在住のシンクタンクの先生からは「日本を知ることは京都を知ること。京都を知って幸せになろう」と発信し、そのメッセージを世界に公開することで、訪問者も日本人も喜ぶでしょうと。

 京都には自然と調和した文化もあり、これからの世界をリードできる物質世界と精神世界のバランスの取れた文化の電源地としての役割があります。

 言葉には情報を伝えるだけでなく、感情をも伝える言霊(ことだま)、エネルギーが宿っています。音声というエネルギー、波動が含まれます。エネルギー量が高いとインパクトが高くなります。特に京言葉をはんなりと柔らかな物腰で話しますが、本質を突いた会話がされることが多いのです。京文化も同じです。

 日本人は一木一草にも神が宿るとして、感謝と畏敬の念を自然に捧げてきました。「自然」「神々」「人」が一体化して発達してきた文化と思います。そのDNAは私たちの思考にも刻まれています。

 千年以上に渡り受け継がれている文化は「本物を知っていること」の強みがあります。

 最近、私が凄いと思って読んだテキストに『世界一のおうち掃除術』があります。羽田空港流の掃除の仕方を、プロフェッショナルが直伝しています。そこで、学んだことは、タオルの絞り方、たたみ方、持ち方が丁寧にかかれていることです。新津春子さんの世界一の掃除術は、実は、かつて日本に誇るべき掃除文化があり、毎朝、表玄関と道路を掃きトイレ掃除をすることが、習慣だった頃の日本の習慣を思い出させてくれるものでした。

 私は小学生の頃、毎朝、玄関と道路を掃くように、母に言われて掃除してから通学していました。

 日本人は「汚れたから」掃除をするのではなく、「汚れないように」掃除をしました。上賀茂にある明神川沿いの社家・西村家では「禊の井戸」と「不浄の井戸」2つがお庭に存在していて汚れた水を清めて流す井戸がありました。日々の暮らしの中で「祓う」ことが習慣になっていたのです。

 上賀茂神社から流れ出た川は境内では「ならの小川」とよばれ、神社をでると「明神川」と名前が変わります。その明神川の清い水を取り入れた庭園から流れる水をもとの清い水にして流す工夫が、取り入れられたのは養和元年(1181年、安徳天皇の時代のことです。水が豊富でも、その水を大切に使う心から、こういうシステムができたのでしょう。

 日本は水が豊富で水と共に生きてきました。水で拭き掃除、水を撒いて清め、京文化のバックヤードには愛があり、知識と知恵があり、門掃きということばにもご近所さんとの良好な関係を保つルールみたいなものがあります。

 洛中ではお墓も門掃きと同じで、お隣のお墓も綺麗にしてお墓参りをするとお聞きしました。でしゃばり過ぎず、優しさを分かち合う愛が京文化のバックヤードにあるのでしょう。心の筋肉を鍛え、京都で心をリセットして心を整えられるまち・京都を皆様でつくり上げていきたいものです。

以上

 

 

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