1万円の観光税(宿泊税)は高いのか、安いのか≪5≫ ~観光税(宿泊税)の使い道・おこしやすプログラムの創設と新たな観光のご提案   (おもてなしの底上げプログラム)の創設を(Welcome Program) 「来者如帰」柊家のおもてなし ~

土居好江

2001年に京すずめを立ち上げた時、京都の定義を「そこに居るだけで心が豊かになり、それがエネルギーに変わるまち・京都」と掲げました。あれから24年経ちましたが、その想いは強くなるばかりです。ちょうど、立ち上げの時期に、柊家の女将・西村明美様にご教示を賜る機会がありました。

その折に玄関の掲げられた「来者如帰」柊家のおもてなしについてもご教示を賜り、感激したことを覚えております。以来、24年間、京都のことについていろいろとご教示を賜りました。何時お伺いしても「来者如帰」のおもてなしの精神が溢れるご対応に学ぶことが多く、老舗の哲学が息づいていると、学ばせていただきました。

東京オリンピックでの「おもてなし」のワードが英語ではなく、「おもてなし」と日本語で語られて流行りました。英語では「hospitality」と訳されますが、「hospitality」は「hospital」(病院)からくる言葉で、もともとは「聖書」にもでてくるイエス・キリストの最後の晩餐からきていて、神様からの恵みを与えるという意味です。

日本語でいうと「接待」に近い意味で、おもてなしは日本の祭りを発端として、神様をお迎えしておもてなしをすることが本来のおもてなしの意味といわれていますが、『源氏物語』のなかにも「もてなし」という記述もあり、平安時代から存在する言葉であることがわかります。

単なるサービスとは異なり、相手を思いやる心を大切にして、物心両面でもてなす日本文化の究極でもあります。

柊家は川端康成先生が定宿とされていましたが、世界各地の著名人も宿泊されています。チャップリンの定宿でもありました。70年後にチャップリンのご息女やご子息が柊家に宿泊された時、帰り際に次のように語られたそうです。「私は生まれた時から世界各地で最高のホテルにしか泊まったことがありませんが、柊家はほかとは比べものにならない。最高です」と、チャップリンの研究者・大野裕之氏が語っています。(講談社現代新書2419 京都のおねだん 大野裕之)

創業以来、「来者如帰」の指針通り、おもてなしを尽くされている姿勢は、私にとっても、いつも学ばせて頂いております。こういうおもてなしの学びの場を宿泊、飲食、お土産物店の関係者にも提供できるよう、行政も対応をお願いしたいものです。
(次号へつづく)

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