山崎家(旧井上家)修復工事ご報告Ⅱ

土居好江


2023年4月13日 宮奥淳司氏撮影

 3月からの修復工事に続いて、今月4月も修復工事が続いています。一週間の予定で作業をされていました。この写真をご覧になって、おわかりのように、基礎だけを残して、修復する部分を削りおとされていました。

 実際に現物を見ながら教えて頂いたのですが、「昭和の時代に修復されて部分には漆喰とコンクリートが混ぜてあります。明治以降にコンクリートが発明されて早く乾き、漆喰にコンクリートを混ぜると強度も強く、40年ぐらいはもつようですが、劣化が40年ぐらいから、でてくると、劣化の加速が早まり、ケミカルなものと自然のものを混ぜると、長いスパンでみると、劣化が早まるとうことを、修復工事で分かったそうです。

 次の写真でわかるように、火床からの火で、土がボロボロになり、コンクリートを塗っている部分だけは、崩落していないのに、その内側はボロボロと崩れ落ちていきます。自然のモノとケミカルなモノを混ぜることのマイナス面をみることができると宮奥淳司氏からご教示頂きました。


劣化してきたおくどさんの中

干し煉瓦

 おくどさんを知り尽くした宮奥淳司氏ならではの鋭い考察です。日本全国、またアフリカの病院に、おくどさんをつくりに行かれた経験豊かな知恵がほとばしり出ています。詳細なご説明を聞き、日本の奥深い伝統産業に感動しました。

おくどさん、かまどは文化財ではなく道具に分類されるため、文献が遺されていないようです。現存するカタチ、現存する状況で当時のものを押し計ることしかできません。修復工事をすることで、数十年前の当時の様子を知ることができます。

今回の修復工事では、かつての修復工事で、新たなケミカルなものが登場していて、コンクリートが混ぜてあったそうです。瞬間的には強度が強く素晴らしい素材でも、経年劣化が進み、自然からできたものより、劣化すると加速が早く、やはり自然のものには叶わないということが明確になりました。

それで、思い出したことがあります。ローマ帝国が滅亡して、もう1500年以上経ちますが、この時代のコンクリート(建造物の接合材料でローマン・コンクリート:砂利セメントを混ぜて硬化させたコンクリート)は現在でも強度が増しているそうです。

古代ローマ時代のコンクリートは、火山灰、石灰、火山岩、海水を混ぜて作られます。この海水が重要な役割を果たしているようで、1,000年以上の時間をかけてコンクリート内で新しい鉱物が形成され、ますます強度を増しているようです。

それは、アメリカのエネルギー省のローレンス・バークレー国立研究所の研究チームが、古代ローマ時代に作られたコンクリートを採取して、X線マイクロ解析を行ったところ、コンクリートの中にアルミナ質のトバモライト結晶が含まれていて、この層状鉱物が、長い時間をかけてコンクリートの強度を高めるのに重要な役割を果たしているとのこと。

この鉱物は、海水と石灰と火山灰が混ざり合って熱が発生することによって生成され、「古代ローマ人は、海水と化学反応を起こして成長する岩のようなコンクリートをつくり出した」と、ユタ大学の地質学者マリー・ジャクソン氏は結論づけました。

また、この構造物に打ち寄せる海水が第2期の鉱物の成長を引き起こし、コ

ンクリート全体の強度をさらに高めたことも、解析から明らかになったよう

です。(ご関心のある方は『American Mineralogist』誌オンライン版に2017年7月3日付をご覧ください)

私は科学はよくわかりませんが、自然のモノと自然のモノを掛け合わせると、更に掛け算となり、コンクリートが成長するのを助けるという方程式に感動しました。宮奥淳司氏も土と砂と藁を混ぜて、太陽で乾かした干し煉瓦を、作っておられました。来月もレポートさせて頂きます。お楽しみになさって下さい。

以上

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