冬の火祭・お火焚祭の時季に、焼きみかんとお火焚饅頭

 土居好江

お火焚饅頭(おしたけさん)

 お玉(火の象形文字) 

やきみかん

 

 寒い時季、何と言っても果物はみかん。みかんには、ビタミンCが含まれ、免疫力を高めます。 冷え性の人や、風邪の予防に、ミカンを皮ごと網で焼いて果肉を食べると、体が温まると、昔から言い伝えられています。 又、むいたミカンの皮を日干しにして乾燥させると、漢方でいう陳皮となり、料理にも使用しています。私はみかんの皮は台所のシンクの掃除にも使っていて、汚れがよく落ちます。

   京都では、みかんを焼いて、お火焚祭でお火焚饅頭と共に頂くのが、11月中旬から12月上旬の京都の習慣です。火を使う会社、鍛冶屋、鋳物師、風呂屋、火を扱う商家、茶道の家元等では、この時季、社員さんや関係者にお火焚饅頭が配られます。昔は、この日を区切りに炬燵や火鉢を出しました。

   新穀の小豆でつくった小判型のこし餡と粒あんにお玉(火の象形文字)の焼き印がつけられたお火焚饅頭は、この時季の代表的なお供えものです。

 200年間火を毎日使って豆腐を作っている入山豆腐さんでは、おくどさんに、みかん、お酒、お火焚饅頭、岩おこしをこの時季にお供えします。岩おこしのお菓子も新穀でつくられたもので、この時季に出始めるからです。

   おくどさんは火の神様が宿る場所だと、古代から考えられていて、八百万の神々が自然や身の回りに宿ると考えられています。その神様が宿っているおくどさんに、敬意と安全を祈る象徴的な場所として、お火焚饅頭やみかんをお供えするのです。

 太陽の高さが最も低くなり、地上に射すエネルギーが最も弱い日を境に、再び太陽の力が強まる日を「一陽来復の日」と言います。旧暦(太陰太陽暦)では前年の冬至を起点に暦をつくり始め、旧暦11月が一年の節目となり、十二支の始まりとなります。宮中では「朔丹冬至(さくたんとうじ)」という盛大な祝宴が行われました。

   自然の恵みを暮らしに取り入れていた時代、自然のエネルギーの強弱にも敏感でした。太古、この時季には天皇の力も弱まると考えられていて、お火焚祭が江戸時代頃に始まったと言い伝えられています。お火焚祭のルーツは諸説ありますが、新嘗祭(収穫祭)に由来するとも言われ、その時に取れた穀物を神様にささげ、五穀豊穣に観謝して、火の恩恵にも感謝する祭です。昭和前半の時代では、京都の各町内で、このお火焚祭が行われていました。今はほとんど神社で行われています。
  京すずめ文化観光研究所では、我々の生活処に届く太陽のエネルギーが最も弱くなる時季(冬至の1週間前からの週)を、中国の古代から伝えられている「竈の神」の伝説にも因み、おくどさんウイークとして、おくどさんサミットを開催しております。今年は12月4日(日)お火焚祭の当日に、五条坂の若宮八幡宮の境内で、移動式おくどさんを使っての炊飯と、第四回おくどさんサミットを開催します。今年は「おくどさん未来衆」を立ち上げ、火の文化を継承するおくどさん未来衆を結成し、更なる取組を行っていきます。

今年も新嘗祭や冬至の季節です。自然に感謝し、火に感謝して寒い季節を乗り越えましょう。
以上

 

 

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