何故、年末に大掃除を行うのか

土居好江

子どもの頃、年末の大掃除は日本の年中行事的なもので、家族総出で行ったものです。年末の大掃除のルーツは「すす払い」という日本古来の年中行事でした。
 年末は大祓といって、天井や仏像を竹ぼうきですすやほこりを払う行事でした。現在でも神社仏閣で行われています。

飛鳥時代に遣唐使によって仏教が日本にもたらされ、貴族にも掃除するという概念が広まりました。つまようじも日本に最初に入ってきた時は、仏具の一つとして口の中を清める用具としてもたらされたものです。

古代の掃除は宗教的な意味合いが強く、葬送の時に部屋をほうきで掃いて掃除して、死者の霊が戻ってこないための、清める儀式でもありました。奈良時代、掃除は柄の短いふきで箒(ははき)と呼ばれ、正倉院には、日本最古の箒がのこされています。これは、掃除道具ではなく、皇后が神事に使うもので、穂先に綺麗な小さなガラス玉が通されています。ほうきは穢れを清める宗教儀式の道具としても、用いられていたのです。

 

古来日本では、大晦日の夜に歳神様が家を訪れると考えられていました。ですから、大掃除をして場を清めて正月を迎えるのです。そのための大掃除なので、祓い清めるタイミングが年末の大掃除をきちんと行うことで心身の大掃除にもつながるのです。『古事記』には「大年(歳)神」「御年(歳)神」が登場しています。

 

ほうきを使い、掃き清めると良いモノを招き入れ悪いモノを追い出すという考えがありました。平安時代には宮中で掃部寮(かもんのりょう)という掃除担当の部署がつくられ、この頃に年末の大掃除が習慣化したと思われます。

毎年、すす払いが12月13日に行われるのは、旧暦の12月13日は婚礼以外は万時大吉とされる鬼宿日(きしゅくにち)だったからです。江戸城でも、すす払いはこの日におこなわれるようになり、庶民にもひろがりました。単なる、掃除ではなく、新年の年神様を迎える神聖な行事として13日が定着したようです。

また、奉公人が交通手段が徒歩しかない時代に、新年に間にあうように始めた日時でもあると言われています。京都でも花街の事始めは12月13日です。この行事は江戸時代に始まり、花街の芸舞妓がこの一年の御礼に師匠のところにご挨拶にお伺いして新年の準備をはじめます。

大掃除を行い、来年の目標や課題も明確にして、心身共にリセットして新年を向けたいものです。
以上

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