京都の引力11 最高峰の宇治茶にチャレンジし、奇想天外な製茶場と喫茶の店舗・「売茶中村」

土居好江


2025年7月2日撮影 売茶中村の当主 中村栄志氏   

店舗

 


茶農家にある製茶器具を小さくしたもの 
茶葉
➄お湯を入れると1枚の茶葉に戻る

  人類が最初に出会った薬草が茶であると中国の古文献にあります。茶の効能は古くから知られており、日本でも解毒に効くものとして、日本茶が飲まれています。

 茶はもともと中国では、茶葉で食していたようですが、火の発見で煮炊きの野菜のように用いられて、煎汁(せんじゅう)を飲む方法に落ち着いたようです。

 近年発見された京都府長岡京市の羽釜、火舎は桓武天皇時代の喫茶を裏付け、しかも奈良時代から、その習慣があったと指摘されています。嵯峨天皇時代には、更に茶に関する文献が遺されています。

 栄西上人は日本初の茶書『喫茶養生記』を記し鎌倉幕府三代将軍の源実朝が二日酔いの折、「茶は養生の仙薬」と進めて、たちまち効果が表れ茶を配下の武将にも進めたというエピソードが残っています。

 その栄西上人と明恵(みょうえ)上人が知り合い、栄西が明恵に茶の種を贈り、その種を高山寺の谷間に撒き茶樹を育て栂ノ尾茶が生まれ、日本一の茶産地として「本茶」と呼ばれました。

 更に栂ノ尾から宇治に産地を移し、農家に茶の種の植え方を教えといいます。馬に乗って畑に入り蹄(ひづめ)跡に種を撒くようにと指導したそうです。想像するだけで、風景が浮かびます。

 京都では、京番茶や、青ほうじ茶など、京都でしか作っていないものもあります。京料理の薄味に馴染むお茶として、工夫をしたお茶が人気です。食事の時、煎茶がでてきて、食事中は、ほうじ茶を出すところもあり、食事の後に抹茶を提供する料亭が京都では多いのです。

 7月に宇治にある「売茶(ばいさ)中村」へお伺いしました。茶葉を究めた中村栄志  氏は宇治のご出身で鹿児島のオーガニックの茶農家で修行をされて、日本茶の良さを知り尽くした34歳の若者です。

 新茶の出回る時期に茶農家から新茶を仕入れて、すぐ真空窒素ガスで空中の二酸化炭素と酸素を除去して冷凍をしています。そして、製茶する時に解凍して、いつも新茶を楽しめる工夫が満載の売茶中村です。摘み立て揉み立て、淹れたてのお茶を楽しめるのです。こんな贅沢な日本茶の楽しみ方は、ここでしか味わえません。店内に製茶器具が置かれて、ここで、製茶の様子を見ながらお茶を楽しめる唯一のお店です。

 本来は茶農家にある器具を、お店用に小さくして、お店で製茶している様子を、そのままご覧頂けるのです。茶葉の匂いや手もみ製茶風の機械も、優しい音で製茶しています。良い製茶は茶葉がそのままお湯を入れると1枚の茶葉に戻ります。写真➄をご覧ください。

 宇治茶の最大の特徴は香りが高いことです。しかも、日本人にとっては最高に健康的な飲み物で、京料理に最も合う飲み物です。美味しい飲み物と美味しい京料理をお愉しみください。常識から飛躍して、奇想天外な発想ができる中村栄志氏に脱帽です。

以上

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