京都の引力 23   ほんまもん

土居好江

  

 「“ほんまもん”を結(ゆ)わう~変革と挑戦~」 。このスローガンは11月13日、京都商工会議所が堀場会長の再任を決定し、発表されたものです。魅力ある京都企業の成長を後押ししながら、「攻め」と「守り」のまちづくりを推進すると発表され京都の原点回帰の流れが加速しているように感じます。

 5世紀~6世紀にかけて伝わった機織りの技術をはじめ、京都では都として、究極のほんまもんをつくる職人のまちでした。西陣織をはじめ74品目の伝統産業があります。そういうほんまもんに囲まれて育ってきた京都の方は、伝統技術を生かし、人間技とは思えないほどの製品を作り上げてきました。

 京都の伝統技術と日本の最先端技術が融合して、真似のできない作り手の深い想いのこもった製品が作られることを期待している一人でもあります。日本の精神性の中心軸・京都を底上げできる風土がそろっています。

 1074年間日本の都として、文化のアンテナであり続けた京都の誇りと歴史、文化の集積した知恵を発揮できる時が到来し、いよいよ「京都の出番」です。

 京都盆地に住む京都市民は365日、山を見て暮らしています。同じ季節でも朝。昼。夕と景色の微妙な色合いの変化や太陽光の変化を楽しむ自然の移ろいを敏感に感じることができます。色彩感覚も敏感で繊細、味覚も薄味の出汁のうま味を舌が覚えています。

 川端康成先生の『古都』には、川辺から見た京の景色、山辺から見た京の景色が美しく描かれています。陽が暮れていく様子も美しく描かれています。四季折々の美しさにも感動しながら、生活できることに感謝して、京都の風土から生まれる産業、技術、伝統芸能、祭、行事に「ほんまもん」を目に焼き付けたいと存じます。

以上

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