お彼岸

土居好江

 おはぎとお酒、両親の好物だった赤飯と果物をお供えしました。あの世の家族や先祖を想う日がお彼岸です。2023年の秋彼岸入りが9月20日、中日が9月23日、秋彼岸明けが9月26日です。

 春分と秋分は、太陽が真東から昇って真西に沈み、昼と夜の長さがほぼ同じになる日ですが、お彼岸にお墓参りに行く風習は、この太陽に関係しています。春分の日と秋分の日は国立天文台の計算によって、太陽の動きで決められています。春分の日は「太陽の黄経が0度のなる日」、秋分の日は「太陽の黄経が180度になる日」と定められています。

 春分、秋分の日は あの世とこの世のエネルギーがほぼ等しくなると考えられ、彼岸と此岸がつながる日、彼岸と此岸がもっとも通じやすくなると考えられ、先祖供養をするようになりました。年に2回のお彼岸を日本人は大切にしてきました。

 三内丸山遺跡の掘立柱の巨大建造物は、春分、秋分の日の出と日没に合わせて対の柱があり、東の富士山の頂上から上る太陽は、西の出雲大社に沈んでいくと考えられてきました。彼岸は西に、此岸は東にあるとされていたのです。太古から、この世とあの世に想いを馳せる文化が古代からありました。

 仏教では、生死の海を渡って到達する悟りの世界・あの世を「彼岸」、その反対側の私たちの生きている煩悩に満ちた現実世界、この世を「此岸(しがん)」と言います。
お彼岸のルーツは、聖徳太子がいた飛鳥時代まで、さかのぼると言われています。平安時代に朝廷の年中行事になっています。源氏物語や蜻蛉(かげろう)日記にも記されている行事です。中国でも同じようにお彼岸にお墓参りをするそうです。

 現在のようにお彼岸にお墓参りをする習慣は、江戸時代中期頃から、始まりました。お彼岸にはお墓参りをしてお花や線香等をお供えし、ご先祖様に日頃の感謝の気持ちで祈ります。

 お彼岸とは、人間の迷いや苦しみの元となっている煩悩のない世界のことで、サンスクリット語で「悟りの世界」を意味します。

 煩悩の世界である「此岸(この世)」から悟りの世界「彼岸」に到着するためには、お彼岸の期間は、仏道の修行をしていない人も、煩悩を無くすために、西に沈む太陽に祈りを捧げていたと言われています。彼岸は西に、此岸は東にあるとされていたからです。

 ふと、哲学者の山折哲雄先生が、良く「夕焼け小焼け」の童謡を通して語っておられたことを思い出しました。夕焼けの向こうにあるものに、人間は惹かれるのですね。

 太陽に関係する歴史が京都にも残っています。比叡山から下鴨神社の糺の森、太秦の蚕の社の元糺が、夏至の朝日が比叡山から差し込むライン上にあることは、あまりにも有名です。太古から太陽の動きに敏感だった日本人の素晴らしさに感動します。夏至の朝、比叡山から朝日が差し込むので名前のルーツが日枝山と言われています。

お彼岸と太陽、天文学の関係が日本の風習に関与しているのも納得できます。

以上

 

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