北陸新幹線延伸に想う  京都仏教界ご提言「地下水影響は千年の愚行」と

土居好江

洛中(烏丸錦上る)で今なお湧き出る手洗井
2024年7月15日撮影

  日本酒や焼酎、泡盛等の日本の「伝統的酒造り」がユネスコの無形文化遺産に登録される見通しになったとのこと、嬉しいことです。京都の酒造りに欠かせない地下水は摩訶不思議なもので、地脈、水脈、龍脈を活かした酒蔵が沢山あります。

 伏見はもともと「伏し水」と呼ばれた地域です。終戦直後は井戸がゴボッ、ゴボッと24時間、自噴していたほど、水に恵まれていたとお聞きしていました。しかし、宅地化で1960年代は地下水の水位が下がり、降った水が屋根や道路から下水に流れて地面に吸い込まれる水の量が急減したそうです。

 昭和天皇の即位は1928年(昭和3年)に京都御所で行われることになり、当時の奈良電鉄(現近鉄)は奈良にも集客をと、京都駅から伏見駅までは国鉄軌道の払い下げをうけて、伏見の南から奈良までの軌道を作り終えていました。

 京都駅から伏見までを突貫工事で早く終えたいものの、陸軍工兵隊の兵舎や練兵場横を通るルートは許可が下りずに、「敷地の地下を通るのなら許可する」とのこと。酒蔵で酒造りに使ってきた水の水源が立たれるとの危機感から、蔵元や蔵人が立ち上がり陸軍に訴えたのです。しかし、明確な論拠を提出せよと、大掛かりな地下水調査が行われました。

 結果、水脈に影響を与えないように高架となり開通しました。この経験を元に「伏見地下水保存委員会」が1977年(昭和53年)に結成され、地下工事を伴うビルの建設や工事に関しては、必ず伏見酒造組合に相談するようにとの協力が確約されたのです。

 京都は水の都です。科学的探査法による地下基盤岩の推定から、東西12キロ、南北33キロメートル、最大深度800メートルという琵琶湖(275憶トン)にも匹敵する211億トンもの水が蓄えられているとの調査結果が20年ほど前に出ています。

 京都仏教会が京都府知事に、京都地下水低下を懸念して、「京都は水に支えられ1200年の歴史を維持できた。全体の80%がトンネルとなる小浜・京都ルート(敦賀一小浜一京都一京田辺一新大阪)は、豊かな水の恵みによって成り立っている京都が京都でなくなる」と要請しました。同じく京都市長にも27日に要請される予定です。

 随分以前に庭師の小川治兵衛氏に庭の手入れについてお話をお伺いした時、「土の下の整備が地上の手入れより大切なんです」と申されたことを思い出しました。目に見えない処を手入れすることが、目に見える庭の木々を手入れするということをご教示頂き、一流の庭師の仕事の凄さを実感したことを思い出しました。

 今、リニアモーターカーという最先端の技術が、京都の自然にどんな影響があるのかを、目に見えない視点からも再考することが迫られています。

 私ども京都市民と全ての日本人も「山と地下水を守る」ことによって、自然だけでなく、文化も暮らしも守られ、京都が京都であり続けることを確認したいと思います。

以上

Pocket