京都の防火システム

~受刑者が活躍しているロスの山火事
自然を活かした京都の防火システム
本願寺水道、京都御所御用水のシステム~

土居好江


15年ほど前に頂戴した放水の絵葉書

境内の放水口防災設備の遺構

 

2025年1月20日撮影 放水防災設備 五条大橋の本願寺水道の土管

  ロスの山火事は消防士のワクチン未接取者が多数解雇された経緯があり、消火対応の消防士不足で、鎮火できていないようです、米国時間1月19日には再び火災が発生しやすい状況になると予報され、そのため、避難者にはあと1週間は避難を続けるよう指示が出ているようです。有毒廃棄物の除去や電気・ガス配管の遮断作業も進められています。

 今回の火災では、1,000人以上の受刑者が消火活動に参加しました。カリフォルニア州矯正更生局(CDCR)は火曜日朝、NPR(公共ラジオ)への声明で「火災キャンプの消防士1,015人が、延焼を遅らせるための防火帯をつくる作業に24時間体制で取り組んでいる」と述べています。

 カリフォルニア州では、受刑者を消防隊として活用するプログラムが実施されており、刑務所にいる受刑者たちが、山火事の最前線で活動しています。
 ロサンゼルスの山火事では、1,116人の受刑者が手作業で防火線を作り、危険な状況下で作業を行っています。受刑者消防士の賃金は技能レベルに応じて日給5.80ドルから10.24ドルで、2023年には以前の水準から倍増したようです。また、1日働くごとに2日分の刑期短縮が認められるため、社会復帰の一助になるそうです。

 京都の歴史で、私の知る限り、受刑者が社会奉仕で火事の鎮火に尽力したことは存じません。市中引き回しのコースはありましたが、一般市民のボランティアで炊き出しの歴史は応仁の乱等でも遺されていますが、今後、探求したいと思います。

 京都には独特の防火システムがありましたが、残念ながら現在は可動していません。江戸時代、京都御所の防火に使われた御所御用水が鴨川から水を引き、東本願寺では本願寺水道を蹴上から引いていました。残念ながら、これら二つとも現在は使われていませんが土管は存在しています。御所ご用水には流動性のある柔らかいコンクリートがつめられていて、現在は井戸水が使用されています。京都御所には名水が湧き出でていました。

 本願寺水道は濾水が激しく、2008年に水の送水が止められています。土管や消火栓口がのこされていますので、東本願寺に行けば、皆様も現物にご覧いただけます。五條大橋の橋の下から上を見れば、本願寺水道の土管を御覧になれます。私は京すずめ学校の講座でもNHK文化センターの講座でも、何回も受講生の皆様に、ご紹介して参りました。

 慶長7年(1602年)に東本願寺が造営されますが、4回の大火により焼失します。 明治に入り東本願寺を再建し、明治27年~30年にかけて本願寺水道を建設します。自然の高低差を利用して水利を用い、動力に頼らない防火システムです。高低差 を活かしたシステムであることは地震火災時の消火活動に家屋倒壊や道路閉塞で消防車、消防隊の到着が遅れる可能性を考えて、断水・停電によって消火栓が使用できないことを予想して建設されました。

 ロスの山火事が早く鎮火すること、雨が鎮火を促すように、心よりお祈り申し上げて、かつて活躍した京都の防火システムをご紹介させて頂きました。

以上

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