一枚の写真に潜む物語   「京都への恋文 」入賞作品、優秀作品から

土居好江


第四回京都への恋文優秀作品
北川佳奈 様 東京都
 
第五回京都への恋文入賞作品
二宮正博 様 福岡県

  一枚の写真には、長い長い物語が隠されています。最初の写真は第四回京都への恋文の東京都在住北川佳奈様の作品です。鴨川の水面に映りこむ光彩が綺麗です。もともと、京都には、水面に映した光景をみる美学が平安時代、嵯峨天皇の時代からありました。月を水面に映して観ることが、優雅だと受け継いできたのです。

 大文字五山送り火の大の字を杯の水に映して、その水を飲み込むという風習もあります。中風にならないというおまじないのようなものです。でも、この杯では小さすぎて大文字が映らないので、お盆やたらいで映す方もおられます。

 また、ダイレクトにモノを申すのではなく、間接的に表現することが、おもいやりであり、美学だという風習が京都にあります。

 キャプションは「”朝の風の匂い 朝の香ばしいパンの匂い 昼の若い大学生の活気 昼の蕩蕩と流れる川の音 夕方のどこからか聞こえる鐘の声 夕方の家路を急ぐ人々の雑踏 この京都の日常に私は溶け込むのが大好きなのです。 大好きだからこそ見えてくる京都の日常をこれからも大事にしたい」とありました。撮影者の優しいお人柄が写真に投影されているようです。

 ともあれ、この作品には、様々な歴史の謎解きが含まれていて、とても京都らしい作品です。

 二つ目の写真は「第五回京都への恋文」で入賞された二宮正博様の作品です。福岡県在住の方ですが、京都が大好きで、ご夫妻で何回も訪問されているそうです。

 平安神宮の鳥居の大きさを印象づけるこの写真は、明治維新後の京都の地盤沈下に立ち上がった京都市民が建都千百年を記念して建立されました。平安神宮は京都府知事が全国行脚して寄付を募り、京都府民の多くの寄付で造営された神社です。当初、万博のパビリオンを建設する計画があったようですが、パビリオンでは一過性なので、神社を作ろうということになったと、宮司様からお聞きしました。当初は現在の動物園あたりが候補地となっていたようですが、方角が悪いという意見から、現在地に落ち着いたそうです。

 平安神宮の地鎮祭の折には、町内ごとに揃いの浴衣を着て、三日三晩踊り明かしたと言います。さらに家路に着く途中に事業所を見つけては、踊り込みまでしていたそうです。このように京都市民が喜びを爆発させたとお聞きしています。その喜びが鳥居の大きさに反映されているような写真です。京都市民の力強さを表している写真ですね。いろいろな物語が潜んでいる一枚の写真です。

以上

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