かき氷とアイスクリーム

土居好江

  
抹茶あわ雪極こおり

ティラミスパフェ氷

 8月に入り、京都では連日39℃という猛暑が続いています。クーラーの効いた室内にいてもアイスクリーム等の冷たいものが美味しい季節です。

 奈良時代、今から1300年前に氷を保存して天皇に献上したという文献があります。奈良県天理市の氷室が日本最古の氷室です。『日本書紀』には、孝徳天皇紀に氷室の管理をしていた職があったことが確認できます。夏場の氷を庶民は頂くことはできませんでしたが、京都にも氷室はありました。

京都市北区西賀茂氷室町にも氷室跡が遺されています。標高450メートルにあり、京都市内の中心部よりも6℃気温が低く、冬場は雪が多かったようです。冬場の氷雪を氷室で夏まで大切に保存していました。

京都にはこの氷室という言葉を使ったお菓子もあります。6月30日の夏越の祓えで頂く水無月は、この氷室の氷のカタチがルーツのお菓子です。

 また、平安時代には貴族が現在のかき氷のようなものを楽しんでいたことが記されています。かき氷のルーツが日本と言われるのは、歴史的な文献が遺されているからかもしれません。中国やギリシャ・ローマ時代という説もありますが、定かではありません。

 庶民が氷を利用できるのは、明治以降でした。製氷技術が無いため、わざわざボストンから氷を輸入していたのです。ビール箱やみかん箱の大きさで3両から5両(現在の30万円~60万円)もする高価なものでした。この氷をつくることに生涯をかけたのが中川嘉平衛でした。北海道の五稜郭で切り出した氷を「函館氷」として販売し、庶民の間で氷ブームが起こったようです。

 世界の歴史をみると、ヨーロッパでは、この氷にアイスクリームやフルーツをのせて食したようです。

 アイスクリームのルーツは紀元前ギリシャ・ローマ時代に食品を保存するための氷雪などに蜜や果汁をかけて食したことから始まったとされています。

アレキサンダー大王は山から氷雪を運ばせて蜜や果汁をいれて冷たい飲み物を兵士に与えて戦に備えたようです。シャーベットも十字軍がイタリアの果物やナッツを使ってソルベット(イタリア語のシャーベット)がつくられました。ヨーロッパでは極限状態になる戦に伴って、氷菓ができあがっているのですね。

話は変わりますが、「にんにく味噌」を常に持ち歩いていた宮本武蔵のことを思い出しました。発酵食品を活力源にした日本とヨーロッパの気候の違いでしょうか。

3年程前に、京都のかき氷屋さんに「京都食物語」の講座の現地視察でお伺いしたいと、かたっぱしからお電話をしたことがあります。こだわりの30軒のお店に、お伺いできるかどうかをお聞きしましたが、天然氷をつくり、夏場のかき入れ時、受講生分のかき氷数を揃えるのが難しいとのことで、断念したことを思い出しました。

 京都では和菓子屋さんが、和菓子をアレンジした美味しい氷を提供されていて、行列ができています。小豆の餡と抹茶、フルーツと贅沢なかき氷も登場しています。メロンを丸ごと使った超高級な9500円の、かき氷が京都一お高いかき氷でしょうか。何人かでシェアーして頂くのでしょうか。皆様も暑い夏、お好きなかき氷をお召し上がりください。

以上

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