京都への恋文 第1回

京都への恋文入賞者及び入賞作品一覧
○京都府知事賞   松嶌 徹     51歳  大阪府
○京都市長賞    狩野 彰一    60歳  横浜市
○京都新聞社賞   谷口 麻衣    26歳  京都市
○遊悠舎京すずめ理事長賞 野田 まりあ   25歳  愛知県刈谷市
○審査委員長賞   池田 功     74歳  川崎市
○佳作  田中 美恵子   49歳  大阪市
内川 泰子    68歳  福岡県
上柳 匡子    41歳  京都市
二瓶 博美    52歳  福島県
箱崎 美月    34歳  神奈川県
宮野 和子    62歳  西宮市

京都への恋文 第1回

京都への恋文審査委員会
委員長     川端 香男里氏 (財)川端康成記念會理事長 東大名誉教授
委員(順不同)   奥田 正叡氏  鷹峯常照寺 住職
〃       浜田 泰介氏  日本画家
〃       井上 章一氏  国際日本文化研究センター教授
〃       坂上 英彦氏  京都嵯峨芸術大学教授
〃       戸祭 達郎氏  立命館大学客員教授 神戸夙川学院大学教授
〃       西村 明美氏  柊家 女将
〃       土居 好江   遊悠舎京すずめ理事長

京都府知事賞

副賞 絵画 浜田泰介画伯の日本画・柊家宿泊券

松嶌 徹(51歳)大阪府

私があなたに惹かれるのは、そこに神を畏れ、仏に祈りを捧げている人々が暮らしていて、だからきっと神がそこに鎮座され、仏が微笑んでおられると思えるからです。やはり、私にとってあなたの元に帰ることは“参拝”であり“巡礼”です。
でも、あなたは自分を「聖地」だなんて考えもしていません。
人々が毎朝繰り返す営み、四季折々の祭りを「宗教」だとも感じていません。
「聖地」だ「宗教」だなんてよそよそしい呼び方をしたら、きっとあなたははにかんで、「かんにんしてやぁ」などと照れることでしょう。人々には「当たり前のことやないの」といわれるだけでしょう。
それほど暮らしにとけ込んでいる(あるいは暮らしがとけ込んでいる)心のかたち。この国は、昔はどこでも神や仏は、山中深く、あるいは立派な聖堂に隠れておられるのではなく、路地の辻に、そして玄関に、台所に、いつも身近におられるものでした。
たとえば朝、ご飯一膳いただくこと。それがそのまま神や仏とともに暮らすこの国の宗教活動でした。
そんな日本の心のかたちを、あなたは今も思い出させてくれる。
そういえば、いまは遠い世界で暮らしておられる天皇陛下。
堀や石垣のない御所に暮らしておられた頃は、人々と同じ空気を吸っておられました。
ただ神や仏を敬い祀ってくださっていただけなのに、東へ行かれたらご自身が神になられて・・・。ずいぶんご苦労なことでしょう。
だから、あなたはいまも、帰ってこられるのを待っているのですね。みかどご自身のために。
また人々と神々と仏たち、ここで一緒に暮らそう、と。
~新年楽 平安楽土 万年春~
かつてあなたに捧げられた、祝いの歌。いまも変わらずこの歌を、心のかたちを守る人々が神々と、仏たちとともに詠っているまち。
だから私も懐かしくて、嬉しくて、あなたの元にまた帰りたくなるのです。
帰って、拝んで、心の形をとり戻して、元気になるのです。
そういえば、また、そろそろ帰ろうかな。

京都市長賞

副賞 京の宿石原宿泊券

狩野彰一(60歳)横浜市

京都よ。日本人の旅情をくすぐる代表者よ。そう、誰もが認めている。だが、僕はそんな君に素直になれない。そりゃあ君が、テレビに映れば、ほー、いいなぁ、と思う。君が持つ懐の深さに感じ入る。だが、テレビで雑誌で、芸能人が、文化人が君を宣伝すればする程、僕はへそ曲がりの初老の男。電波にのった、この世に知れ渡った所へなんぞ行くか、といつも思っている。だから、僕が君の所へ立ち寄ったのは、六十年の人生でたったの数度。寂しい回数ではある。
だが、君を懐かしく思う気持では、僕もひけをとらない。中学の修学旅行。僕は新京極で、他校の生徒の波にのまれ、仲間を見失った。焦れば焦るほど、まわりは見慣れない景色になった。そんな僕を見かね、声をかけてくれたのが、地元の女子高生だった。彼女は僕の仲間探しに付き合ってくれた。あの時、ボ僕はどのぐらい彼女と一緒にいたのだろうか。恐らく数分だったろう。めざとい仲間に後頭部をはたかれ、我に返った時、彼女は雑踏の人になっていた。おめえ、何のためのカメラだよ!その夜、僕はさんざんに嘲られた。年上の女性の優しかったたたずまい。初めて聞く京言葉。一睡もできなかった。次の日、僕はパシャパシャと無意味にシャッターを押し続けた。家族は現像された写真に首をかしげた。…….京都よ。これが君の思い出だ。あれから45年。遥かな過去。30年連れ添った妻は京都とは何の縁もない。その妻を連れて、僕は新京極に立ってみようと思っている。残された時間はそんなに多くない。京都よ、もう君にへそを曲げている時間などないのだ。

京都新聞社賞

副賞 愛染工房 スカーフ

谷口 麻衣(26歳)京都市

京都への恋文 第1回

変わらない街があるから、変わっていく私がいる。

遊悠舎京すずめ理事長賞

副賞 愛染工房 スカーフ

野田 まりあ(25歳)愛知県刈谷市

鴨川の 夕日みたくて 京都旅

審査委員長賞

副賞 松籟庵食事券

池田 功(74歳)川崎市

京都通 父がだんだん 偉く見え

佳作

副賞 愛染工房スカーフ、千丸屋湯葉詰め合わせ

田中 美恵子(49歳)大阪市

前略
とにもかくにも大変お世話になりました。かれこれ三十年以上にもなります。その時の目的は思い出せませんが、中学生の時に一人で訪れて、その後も、恋の成就を祈ったり、失恋の痛みを癒したり……。
どちらかと言うと、京都へは哀しみを捨てるために行っていたように思います。
でも弱った心を抱えて訪れるたびに、歴史の懐に擁かれて、回復を果たすことができました。
そして、生涯の伴侶との出会いの場も京都でした。だから、心をこめて言います。
ありがとう。

内川 泰子(68歳)福岡県

初めて私が京都を訪れたのは、中学3年生の5月、修学旅行の時でした。記憶の埃をはたいてみれば、舞妓さんの可憐さに目を見張り、「おいでやす」などの独特の柔和な京言葉に触れて、15歳のみんなは大はしゃぎ。神社や仏閣をいくつか巡りました。中でも、記念写真の団体撮影をした新緑の清水寺はことに印象に残っています。
それから、53年経過した昨秋。夫と再び京都を旅しました。「哲学の道」「円山公園」等、初めての地も素敵な所ばかり。
清水の舞台にも、53年振りに立ちました。昔のままの姿をとどめていて、一面に樹木が繁り、見事な紅葉に心を奪われました。「清水の舞台」。これまでの長い人生の中で、このフレーズが何度頭を過り、実際に飛び降りたことでしょう。
「また、来るからね」
そっとつぶやいて、帰ってきました。

上柳 匡子(41歳)京都市

京都生れ。京都育ち。
東京に出ようと思ったこともあるけれど、
やっぱり京都にいてよかった。
京都って、いつまでたっても旨味の出る魔法の酢昆布のよう。
山はあるし川はあるし、神社仏閣、博物館美術館や能舞台。
大学銭湯お神水。春は桜。秋紅葉。夏は川床、雪金閣。
華道の家元、お煎茶抹茶。老舗きんとん豆大福。
美味しいパン屋とイタメシおばんざいカフェ。
祇園花街舞妓に芸妓、京都南座能神楽。
六波念仏壬生狂言、祇園祭にお松明。
四条どんつき八坂と松尾、鵜飼船。
天神弘法、御所ウォーキング。
ずっと、京都にいよう。京都いちばん。
でしょ?

二瓶 博美(52歳)福島県

美しき 古都に継がれる 京ことば

箱崎 美月(34歳)神奈川県

はんなりが 私のサプリ 四季ごとに

宮野 和子(62歳)西宮市

京都への恋文 第1回

京野菜は やさしくて 甘いね

 

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