第七回おくどさんサミットのご報告1

土居 好江
2025年12月7日(日)、朝9時30分より、祇園石段下 いづ重様で厨房のおくどさんを見学させて頂き、10時30分より知恩院・和順会館にて、おくどさんサミット第Ⅱ部を開催させて頂きました。以下、ご報告申し上げます。

祇園石段下いづ重でのサミット第一部 2025年12月7日

  四条通の東の端、祇園石段下の向かいにある祇園いづ重さんは、明治時代から続く、おくどさんがある厨房があります。おくどさんで、すし飯、お揚げさん、シイタケを炊いておらえるのをご存じない方が多いと思います。

 近代的なビルの中に、奥まった玄関の前はタイルの鴬張りで、人が歩くと音がします。昔、料亭で門から玄関まで砂利が敷き詰めたあった時に、その砂利の音で、お客様がお越しになったことを知らせる役目がありました。こういう仕掛けと敷地に流れる地下水をご提供されている蛇口が門から玄関口まであります。

 初めていづ重さんにお伺いされた方は、驚いておられました。厨房には、赤いおくどさんが鎮座しています。このおくどさんが美味しい厳選された具材を美味に仕上げる魔法の調理道具です。このおくどさんで炊くシイタケは2日間、油揚げは 2時間、寿司飯はもちろん、その美味しさは絶品です。

2023年~現在
2000年~2022年 8種類の海藻巻寿司

 いづ重のおくどさんで炊くご飯、油あげ、シイタケは絶品。ガスの火力とは違う、おくどさんの火にこだわり、朝5時から薪をくべて、2時間かけて温めて使う下準備が美味しさを生み出しています。

 京寿司と江戸前寿司との大きな違いは、すし飯とネタの違いです。京寿司はご飯が命で、「いづ重」では、滋賀県産の日本晴を井戸の地下水で、カツオと昆布のダシで炊いています。味を染み込みやすくするため、使うのは古米で、甘めの寿司酢をまとわせ、扇がずに米の芯まで味を含ませていて、すし飯がとても美味しく頂けます。

 米を炊くのは広葉樹、すしの具材は針葉樹と使い分けて、火力の違いが美味しさを引き出すと、美味しさの魔法をご披露されました。また、四条通に面しているので、排気が出ないように工夫をされています。

 ガスや電気調理器とは一線を画す“おいしさ”を生み出すことは言うまでもありませんが、設備の観点、特に換気・防災の観点から、これを維持するための付帯設備やメンテナンスにかかるコストは決して小さくありません。排気設備だけで家一軒建つほど、高額な設備です。それにもかかわらず、安易に現代的な調理器具へ転換することなく、伝統の技術と様式を守り続けておられることは、おくどさんの深い想いと伝統を守ることの信念だと強く感じました」と。

 生粋の京都人特有の頑固さが伝統を守る精神(こころ)なのだと、感動することが一つひとつのお話の中に沢山ございました。参加者の皆様も、この工夫と最先端の技術を駆使しながら、伝統を守る姿勢に感動しました。

 また、参加者からの感想で「餅つきの蒸籠でもち米を蒸す時の燃料は枯れ木を使用していました。広葉樹と針葉樹の使い分けはしていませんでしたが、燃料によって違いがあることが新鮮でした。日常のお米は藁を燃料にして、藁に空気が通るように折らないように円弧上にして竈の焚口に入れていました。五右衛門風呂も同じように藁を燃料として使用していました。藁を効率よく燃料にする為と藁を家まで運ぶ距離があった為、寒い冬などは、出来る限り運ぶ回数を少なくするためにどのようにすれば少ない燃料でお米を炊けるかを考えていた結果です。

 竈の外形に付いても竈から容器を取り出す時の使用者の便宜を図っていることが竈技師の経験と優しさが伺えました。おくどさんには先人の知恵が凝縮されていると思いました」と。

 江戸時代にファーストフードとして発達した江戸前寿司に対して、京寿司は手間暇かけて魚を酢でしめたり、塩でしめたりして保存が効くように仕上げます。まさに京寿司の原点がいづ重の寿司です。

 明治45年、「いづう」から、暖簾分けして、「いづう」がお茶屋を担当、「いづ重」が料亭を担当して仕出しという形で会席料理の寿司を提供していました。当時の会席料理に寿司が入っていたからです。そのお皿が旧店舗には壁に飾ってありました。

「いづ重」は2023年2月14日にリニュアルオープンして現在の新店舗となり、おくどさんも新しくなりました。明治の創業時代から、ほとんど変わらない作り方で、京都の人々が食してきたほんのりと柔らかい味が「いづ重」の味です。

八坂神社のお供えは山のモノ、海のモノ両方を献上するので、海の珍味、山の珍味がいづ重のメニューにあります。海藻巻は8種類の海藻を巻き寿司にした珍しい巻き寿司です。八坂神社へのお供えの折詰は必ず海藻巻が入ります。

「第七回おくどさんサミット式次第

2025 年 12 月 7 日(日)午前 9:30 時~午後1時頃            

 第Ⅰ会場:祇園いづ重 (京都市東山区祇園石段下)

 第Ⅱ会場:知恩院和順会館 会議室 (円山公園西北)

                                      主催:一般社団法人京すずめ文化観光研究所

1部
9時30分開始厨房見学と説明移動
いづ重厨房
当主 北村典生(祇園商店街振興組合理事長)
 厨房でのおくどさんの煮炊き、説明、見学    
  客席での京寿司と江戸前寿司について   土居好江
Ⅱ部サミット開始 和順会館  
10 時 30 分 開会の挨拶 京すずめ文化観光研究所 理事長 土居好江
  ご来賓祝辞  近畿農政局長  志知雄一
ヒルトン京都 総料理長 マリアンジェラ・ルッジェーロ
  顧問挨拶 国際日本文化研究センター所長
京すずめ文化観光研究所
顧問   井上章一 
  意見交換 全員
11:30 昼食 いづ重特製寿司折
12:15 意見交換再開 全員
サミット宣言 おくどさん未来衆 おくどさん未来衆代表 長谷川検一
13:00 閉会   謝辞 京すずめ文化観光研究所 顧問
元京都新聞社代表取締役 斎藤 修 

農林水産省近畿農政局「関西食の「わ」プログラム認定行事  

 第Ⅱ部の意見交換は知恩院・和順会館で開催され、約2時間30分、交流、意見交換を行い、いづ重の寿司折を美味しく頂戴しました。
 参加者約30人が全員意見交換、実際に携わっている中で気づいたことなど、話し合いました。詳細は次号でご紹介させて頂きます。

以上

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