京都への恋文への特別寄稿

マリアンジェラ ルッジェ-ロ
キュリナリー ダイレクター
ヒルトン京都
「Ambasciatrice della Cucina Italiana Patrimonio dell’Unesco nel Mondo」(ユネスコ世界遺産・イタリア料理のアンバサダー)の称号を2025年授与
京都は奥深い街です。
その奥深さは静かな息づかいのように、徐々に明らかになり、ほのかな香りのようにいつまでも心に残る優雅さがあります。
私は地中海の風によって形作らてた海岸、近代的な都市、砂漠といった、京都とは全く異なる場所で長年過ごした後、京都にやって来ました。
しかし、京都ほど繊細に心に寄り添い、優しく、敬意を持って、決して離れない静かな強さで私を迎えてくれた街はありませんでした。
私の人生は常に、味わい、人々をケアすること、そして伝統を中心に形成されてきました。
ですが、ここ京都で、料理はまったく別のものになり得ることに気づきましたーそれは「静けさ」、「季節」、「調和」を表す言語であるということに
京都は、これまで耳を傾けてこなかった事に耳を傾けることの大切さを教えてくれました。 ー夜明けに収穫される野菜の繊細さ、朝日の中の静まり返った通り、何世紀も受け継がれた市場の古いリズムー
そして、シンプルさとは何かが欠けていることではなく、純粋さの一種であることを教えてくれました。
私の料理には、イタリアの記億が息づいていますー祖母達の台所、日曜日のランチ、生地をこねながら語られる物語の記憶です。
しかし毎日京都の食材と向き合うたび、より深い変化がありました。
私のルーツが、京都のルーツと出会ったのです。
それは二つの文化が静かに交わす対話、土地や季節への敬意、小さなものの中にある美しさへの敬意への共鳴です。
初めて地元のトマトを味わった日のことを今でも覚えていますーそれは物語になりました。
数時間前に摘まれたハーブの束を手にしたとき—それはポエムのようでした。
京都の農家の方と初めて出会ったとき—謙虚さと献身を学びました
京都は私にとって単なる場所ではなく、私を導いてくれる場所になりました。
料理とは何よりもまず感謝の行為であることを思い出させてくれた場所。
作る前に、まず耳を傾けることを学ばなければいけないとを再び思い出させてくれた場所。
私は歩く時、耳を澄ませるようになりました。
光が季節に合わせて表情を変え、抱えている重たいものが何であれ、その水の流れがすべて洗い流してくれる鴨川のほとりで、大切なアイデアがたくさん生まれました。
じっくり考えたいときは、京都府立植物園を歩きます。
植物園を歩きながら、植物の形や色、香りを心に染み込ませ、アイデアが浮かぶのを待ちます。
新しいメニューにインスピレーションが欲しいときは、よく下鴨神社に行きます。
高い木々の下では、太古の静寂を感じることができ、まるで森の優しいささやきが創造性を運んでくれるようです。
京都は私に「静けさ」を取り戻してくれました。
ペースを落とすこと、よく観察すること、深く感じることを教えてくれました。
そして、季節ごとの恵みがあり、料理は遠く離れた世界を結ぶ懸け橋になることも教えてくれました。
今、ホテルでお客様のために料理するときこれらのすべてを取り入れています。それは、私のイタリア魂とジャパニーズ魂、私の伝統と京都の伝統、私の物語と京都の物語です。
そして私が作る一皿一皿が京都への、京都の美しさを守る人々への、耳を傾ける人にそっと寄り添う京都の静かな優雅さへの小さなラブレターです。
京都は私を変えてくれました。
より注意深く見ること、より深く聴くこと、敬意と心を込めて料理をすること、そのすべてを教えてくれました。
私の京都への感謝の気持ちは尽きることはありません。
以上