第三回「京都への恋文」審査結果のお知らせ

第三回「京都への恋文」の審査委員の皆様による結果を報告します。今回、該当する佳作はありませんでした。表彰式は2020年の京すずめ創立20周年行事(20PJ)の中で行います。第一回、第二回の作品も併せた「京都への恋文」小冊子を発行します。

●京都府知事賞

文章:どんどん

氏名:長谷川昌孝(はせがわ まさたか)

住所:神奈川県横浜市

昔、京都では焚火のことを「どんどん」と言った。比叡降しと底冷えのする朝には、藁を焼いてその「どんどん」があちこちで始まった。町内の人が一人二人と集まり「おはようさん!今日も寒おますなー」それぞれ炎を見、炎に手をあてながら談笑。「どんどん」の炎が勢いよく燃え上がる頃、いつの間にか大きな人の輪が出来ていた。
炎も下火になって、必ず誰かが挨拶。
「あー温かった。おおきに、ええ、藁灰ができましたな!」
「へー、おおきに!」
火が残る藁灰を主人がスコップで掬う、
「おきばりやっしゃ」「ほな、なー」
お互い声かけ合いながら、それぞれ消えゆく街の人。
冷たく悴んだ手を急に温め、痛い手に顔をしかめた、懐かしい幼少。昔、昔のお話。
どんどん燃える焚き火に人は集まり、消えた焚き火に人は三々五々消え去る。
消え去って早や半世紀。歳月と共にどんどん燃える。
故郷への想い。おおきに!の響きが心地よい。
人の情けが温い。愛しき哉京都。

●京都市長賞

文章:京都に何があるん

氏名:鎌田吉仁

住所:大阪府枚方市

「京都に何があるん」 私が祖母にたずねると、いつも決まって 「京都にはなぁ、京都があんねん。」 と答えた祖母。朝から清水さんを詣で、週末には大丸へ買い物、初詣は八坂さんから平安神宮。宇治も嵐山も北山も、京都をこよなく愛していた。「いつ行っても顔が違う。せやのに、千年以上前から同じ顔してる。」 そう言う祖母の顔は、いつも笑顔で、あぁ、京都とデートしててんなぁ。 あれから30年。私も、私のお気に入りの京都を見つけた。その空気を感じに、一人つぶやく。 「そうだ、京都に行こう。」

●審査委員長賞

文章:

氏名:鈴木邦義

住所:神奈川県横須賀市

千二百年の古都でありながら、古今が『調和』している京都。訪れる人々は皆、その『調和』に魅了されることでしょう。しかし、文化庁の京都移転が決まり、文化観光都市・京都の更なる昇華が期待される一方、近年徐々に『調和の乱れ』も・・・。その懸念は、京都をこよなく愛した川端康成が知己の東山魁夷に「京都が失われない内に描いてください」と言葉からも窺えます。
さて、京都ファンの私が許し難いのは、京都タワーと賀茂川の亀形の飛石。曽て、フランスのミッテラン大統領が京都タワーを遠望し「京都には必要の無いものですね」と苦言を呈されたのは流石に慧眼です。東京タワーやスカイツリーとは「場」が違うのです。又、あの飛石は平安神宮の蒼龍池の趣ある飛石とは対極で、京を流れる川の風致を汚しています。京都の官民の方々には、 斯様な禍根を残すようなことの無いよう、諸計画の判断基準を古今の『調和』において頂きたいと、切に思うのです。

●京都新聞賞

絵手紙

氏名:宮野和子

住所:京都府京都市

 

●京すずめ文化観光研究所理事長賞

文章:

氏名:谷口早苗

住所:兵庫県宝塚市

私が子供だった60年前の師走の京都。神棚・仏壇掃除から始まり、畳をあげ、近所一斉の煤払い。そして門掃き。おくどさん。井戸神さんの一年の感謝と年神さんの準備。大小の鏡餅。愛宕さんの護符。玄関両側に根引きの松としめ飾り・・・。思い出すと、懐かしさで一杯になります。四季折々に当たり前に行事があり、それが生活にとけこんでいる京都。その京都を離れて数十年。年を重ねての今~その当たり前にしてきた事が、長い間、地域に根ざし続けてきた事も考えると、一つ一つが私の心の琴線にふれ、涙が滲みます。
文化庁の移転も、さもありなんと納得。「京都の人はいけず、一見はんお断り、ぶぶ漬けでも・・・」とマイナスイメージで評されますが、千年の都ならではの都人の智恵から生じたおもてなしの裏返しの文化ではないかと考えます。せわしない、いらちでやすけないと言われないよう、たおやかに、はんなりと生きていけたら・・・と思っています。

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