第四回おくどさんサミットのご報告


炊飯名人がご飯を炊く

毎日おくどさんを使用している大将

 


卓上宇陀竃

 

あまりの美味しさにご飯の写真を撮り忘れていました。残念です。新米をおくどさんで炊いて試食しましたら、想定外のおかわり続出で、驚きの連続でした。美味しいご飯はおかずがなくても食せるものです。参加者30数名が、ご飯の美味しさを堪能させ頂き、至福のひとときを過ごしました。

【開催概要】

タイトル : 第4回おくどさんサミット
開催日 : 2022年12月4日(日)午前11時 炊飯開始~午後3時30分
会場 : 若宮八幡宮(東山五条)(美人神社・陶器神社)
主催 : 一般社団法人京すずめ文化観光研究所

【式次第】

時間帯 項目
AM:11 :00 Ⅰ部 ご飯炊き 若宮八幡宮境内
11:45 試食
PM 12:40 Ⅱ部 サミット 若宮八幡宮社務所
主催者挨拶 京すずめ文化観光研究所理事長 土居好江
宮司挨拶 若宮八幡宮宮司 松井曜子
来賓挨拶

 

近畿農政局長

京都市長

出倉功一

門川大作

意見交換 状況報告 参加者全員
おくどさん未来衆宣言 阿ぶり餅一和当主

山崎家当主

長谷川検一

山崎寿郎

謝辞 京すずめ文化観光研究所顧問 京すずめ文化観光研究所顧問

 

斎藤 修

井上 章一

PM15;00 Ⅲ部 お火焚祭 若宮八幡宮境内

 

2022年12月4日、午前11時から、第四回おくどさんサミットを五条坂の若宮八幡宮にて開催させて頂きました。移動式の竃・おくどさんを4つ持ち込んでのサミットは初めてです。奈良県から四つのおくどさんを持ち込み、境内でご飯を炊かせて頂きました。炊き立ての新米のご飯を大きい器で大盛5杯、4杯、3杯とおかわりが続出したことは、想定外でした。とても美味しく頂きました。

社務所でサミットを開催させて頂き、今回は「おくどさん未来衆」の結成をさせていただきました。今後は、おくどさん未来衆の方々が、火の文化、おくどさん文化を、次世代へ継承してご活躍を期待して、結成させて頂きました。

今回は、おくどさんサミット後にお火焚祭に参加させていただくこともできました。戦前までは京都の各町内で、行われていた行事ですが、今では限られた場所での神事となっています。火に関する想いは各自それぞれあるようです。ご参加いただいた皆様から昔の実家を思い出したり、両親、祖父母を思い出したことを語られていました。火には心の奥に眠っている記憶を思い起こさせる何かがあるように思います。

さて、私は2007年から京すずめ学校等で、おくどさんの講座や体験学習を開催して、おくどさんと取り組んで参りました。まだ15年でございますが、多くのことを学ばせて頂きました。特におくどさんを使用していることを宣伝もしないで、たんたんと伝統を守っておられる老舗のお取組みに感動しております。

日頃の尊いお取組みを、もっともっと皆様に知って頂きたいと、「おくどさん未来衆」を結成させて頂きました。

時代がどんどん変化していく中で、守るべきもの、継承すべき本質的なもの、更に進化させていくものなど、ございますが、おくどさん文化の本質、火の文化を常にアップデートさせて見直し、更に火に感謝する心を育むことこそ、現在人にかけているものだと思います。

料理に国籍があるように、もし、火に国籍があるなら、日本の火は日本人の命を繋ぐ心の灯だと思います。年末年始のをけら参りにみられるように、京都の火の文化は特別だと思っております。火種を重んじて、新しい火で、リセットすることで、新たな時代を拓くと言う哲学があります。明治天皇ご誕生の折には川端道喜邸で火種を取り、中山邸の井戸水で産湯とされました、

食事を頂く時に、「頂きます」とはお命いただきます。「いただきます」をフランス語では「ボナペティ」、召し上がれ、英語ではLet’s eatと言います、”いただきます”が、料理をした人だけでなく、食材に携わってくれた人や、食材に対する感謝の言葉だと知ったフランス人や英国の方が、泣く程感動されていました。 しかも、日本人は子供の時から教えられています。ちなみに「ボナペティ」は、作った側が言う「召し上がれ」に近い言葉です。たったの”頂きます”という言葉の中に、こんな深い哲学が込められているのが日本です。火は、命を繋ぐ火であると思います。

今はガスもIHに変わり、火を直接見なくなった時代です。火を使いだした人類の先祖が、あまりにも遠く古いことでもありますが、火の恩恵が当たり前の時代から現在まで、受け継ぐ精神もおくどさんサミットで確認しあいたい点でございます。

1万年の台所の歴史をみると、とても面白い発見があります。食べることに手間暇かけてきた美味しさの基準が、便利さと引き換えに変わってきたではないかと思います。時代と折り合いをつけながら、美味しいご飯、美味しい食事を追求していく、まさに暮らしの重要文化財を大切に守り継承して参りたいと存じます。

お火焚祭は、ほとんどの方が、初めて参加されるようで、お火焚串に願い事を書いて、炊き上げていただきました。各自、それぞれ願いごとを記入して、お火焚祭に参加いたしました。


点火前のお火焚祭

お火焚串を炊き上げているところ

趣意書 おくどさん未来衆の結成について

呼びかけ人  一般社団法人京すずめ文化観光研究所

理事長   土居好江

皆さんはおくどさんで炊いたご飯を、召し上がったことはありますか。21世紀の今でも私たちは、おくどさん(竃)を使い続けています。千年、500年、400年、300年200年・・・・もの長い間、使い続けている理由はご飯や餅、餡、団子が格別に美味しいからです。また維持管理や手間もかかる大変な中、おくどさんを復活させた料亭もあります。

縄文時代からの台所を振り返ると、興味深い発見が沢山あります。熱力学的、構造学的にも科学的、文化的、歴史的に、とても大事なことが詰まったおくどさんです。

おくどさんは文化財ではなく、道具類に分類されるため、文献も少なく、各地の城の台所にも竃跡としか、遺されていません。もし、準文化財としての指定があれば、保存しやすく、現物を遺す先人が多かったのではないでしょうか。京町家のような認定も視野に、準文化財としての認定を願うところです。

また、京料理が名水と火の使い方を工夫して、自然の恵みに感謝し、四季折々の旬の食材を究め、積み重ねた結果、今日の京料理・和食が出来上がりました。

その料理を支え、古き良き日本の生活文化、食文化を支えて、おくどさんを守り次世代へ継承する「おくどさん未来衆」をおくどさんに関わるメンバーで結成させて頂きます。「おくどさん未来衆」が、日本文化の源流を継承できるよう尽力して参りたいと思います。

2001年の「京すずめ」発足から、一貫して暮らしの文化遺産の発掘発信を柱に活動して22年目となります。「京すずめ学校」のカリキュラム・京都火灯物語(2007年度)で「おくどさん」の講座を開催して以来、全国のおくどさんの使用状況調査や、維持管理している方々と意見交換、調査研究を続けて参りました。

その中で、阿ぶり餅一文字和輔(一和)さんのおくどさんは、平安時代から1022年間使い続けて、千年前の創業者の精神(こころ)を受け継ぎ、千年間湧き出でる井戸にも、毎日、お餅が供えられ、モノやカタチに込められた精神(こころ)を受け継いでおられることを知りました。このように、おくどさんに込められた文化を継承する未来衆として、本日より新たな気持ちで出発させて頂きます。

活動

おくどさんの歴史的価値の保存活動と今後百年、千年と繋がる保存と普及、修復、等、日本の食文化、ご飯文化、火の文化、窯の文化に役立つ情報収集を行います。維持保存に尽力することで、おくどさん文化の継承を目指します。

おくどさん未来衆メンバー一覧

一般社団法人京すずめ文化観光研究所

会社名・団体名 役職 お名前 ノート
阿ぶり餅

㈱一文字屋和輔

当主
代表取締役
長谷川検一 創業以来千年間、おくどさんと井戸、水を使い続けている。レシピも千年間ほぼ同じで一品のみを販売している
    々 女将 長谷川奈生
入山豆腐店 店主 入山貴之 創業以来200年間おくどさんで大豆を炊き豆腐をつくる
竃ai研究会 羽原亜紀子 竈を取材し「月刊大和路ならら」で連載。学校教育で竈の活用を提案実践
大徳寺一久 店主 津田邦雄 創業以来500年間、おくどさんで大徳寺納豆をつくる
天神堂 店主 波多野昌寿 創業以来70年間、おくどさんで餡を炊く
(有)テラ 代表 小林亜里 愛宕山麓でギャラリー、イベント開催、おくどさんで火のある暮らしを楽しむ
㈱半兵衛麩 女将 玉置 淳 創業以来300年間、おくどさんで麩をつくり昭和中期から維持保存
プレマ株式会社 代表取締役 中川信男 世界大会3年連続入賞のジェラティエーレとして前代未聞、おくどさんを移築して店舗経営。宅地建物取引士
10 平野屋 女将 井上典子 創業以来400年間おくどさんでご飯と名物の団子を炊く
11 ふく吉 大将 福田清嗣 築120年の京町家のおくどさんを復活させて、料亭のご飯を炊く
12  々 大将 近藤洋未
13 宮奥左官工業 一級左官技能士

二級土木施工管理技士

宮奥淳司 世界、日本各地でおくどさんをつくり、修復復活に尽力
14 飯炊職人飯米衛 飯炊名人 武本秀明 伝統的炊飯を各地で指導
15 山崎家 当主 山崎寿郎 江戸時代中期の屋敷にダイドコロニワの土間には7つの焚口のおくどさん
16 ㈱山田製油 代表取締役 山田康一 国産胡麻油をおくどさんでつくる
17 京すずめ文化観光研究所 理事長

 

土居好江 おくどさん未来衆呼びかけ人。各地のおくどさんの調査研究、継承に尽力

(五十音順)

 著作権 © 一般社団法人京すずめ文化観光研究所 土居好江 2022年12月4日発行

 

 

 

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