京のおもてなし

土居好江


祇園花見小路

柊家 玄関 来者如帰

最近、祇園でお買い物をする機会が増えました。金平糖の祇園店で、お買い物したり、京寿司のお店にお伺いするため等ですが、最近祇園に出店希望する企業が増えました。

現在は店舗が工事中の京寿司・いづ重さんも、100年以上も仕入れ先が同じという理由で、アメリカのテレビ局から視察の要望があったこと等、10年以上も前のことですが、クールジャパンの取材のエピソードを鮮烈に覚えています。京都の老舗は仕入れ先もずーと同じです。替えると味が変わるからです。

何故、祇園で商いをすれば一流と呼ばれるのか。先斗町、木屋町、宮川町でも同じではないのかと思うのですが、祇園は独特の心地良さのある廓で、最高のおもてなしの付加価値が、つくからではないでしょうか。
その感覚は、そこに住んだことのある人や、通いつめているなじみ客しか理解できないでしょう。

白洲次郎が通い詰めたというお茶屋・松八重さんでは、女将さんが京都を代表するようなおもてなしをされます。以前、修学旅行で嫌な思いをした秋田県の方が、京都新聞に投稿されたのをご覧になって、京都旅行をプレゼントされました。
そのことを「第二回京都への恋文」に応募されました。表彰式の当日は修学旅行で欠席とのことで、松八重の女将さんが代理出席して下さったことが忘れられません。その後、京すずめのメンバーで親しくして頂いている方から、松八重にご招待して頂き、楽しいひとときを過ごさせて頂きました。

祇園で最初にお茶屋バーを開業した吉うたの女将さんは、シリーズで出版されるほどの名物女将で、一度でもお伺いしたお客様を覚えておられます。その心地良さは随一です。

祇園独特の 一見さんお断りは合理的な危機管理と座持ちのおもてなしで、上質な空間でのおもてなしに不可欠なものです。お客様の趣向や環境、背景を知り尽くした上で、会計も最高のおもてなしをするため、一見さんお断りとなっています。

一見さんお断りの本当の理由は お客様の好みや体調、趣向を知り尽くし、日頃のお付き合いを大切にした上で、おもてなしをするために、一見さんお断りが始まったようです。また、料理も架け払いとなるため、江戸時代からお金を持たなくても、後払いなので、信用のあるなじみ客だけが、遊ぶ処となりました。

更に商いの仕方、人間性、志等を鑑み、信用のできない人は、自分のネットワークには入れないという合理的な危機管理が一見さんお断りの理由となっています。また通常とは異なり、店がお客さんを選ぶのが一見さんお断りの意味でもあります。

江戸時代から続く柊家の「来者如帰」は我が家に帰ってきたように迎えるというこころ(精神)が京のおもてなしの神髄でしょうか。

以上

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