第三回おくどさんサミットを開催

第三回おくどさんサミットご報告 1

主催者挨拶  京すずめ文化観光研究所 理事長 土居好江

年末のご多忙の中、また、コロナ禍の中、おくどさんサミットを最大のリスク管理を行い、開催させて頂きました。誠に有難う存じます。こんな時に開催しなくても良いのではと思われた方もおられると存じますが、京都は1074年間、都であり続けた活力源の一つに、重いものは軽く見せ、軽いものは重く見せるというバランスのとり方がございました。これは京都のおもてなしの仕草です。疫病にも打ち勝った歴史がございました。悠然とした姿勢で疫病退散の願いを込めて開催させて頂きました。

私からは3つのことを申し上げたいと存じます。

1、何故、この年末の慌ただしい時季にサミットを開催させて頂くのかは、京都の歴史に答えがございます。

 明日は冬至でございます。江戸時代、京都から始まった行事・お火焚き祭は、冬至の前後、太陽のエネルギーが弱まると天皇の力も弱まるとして、火を焚きました。江戸時代、まちの空き地で火を炊いている絵図が残されています。エネルギーを強め火に感謝する行事は1980年代頃までは京都の町内会でも行われておりましたが、安全管理の為か、現在では神社や一部地域で行われております。

 私も子供の頃は火にサツマイモを入れて、焼きいもをほおばった経験がございます。落ち葉を拾って焚き火をするのが普通だった時代には、どんどんと申しておりました。今の50代以上ぐらいの方は経験があるのではないでしょうか。煙が良くないという理由で現在ではほとんど見受けられません。

 火を焚くという体験が今は無くなりましたので、火が遠い存在になっております。IHが普及して炎を直接見る機会が無くなりました。家族の団らんがおくどさんを中心にあった時代から、リビングが団らんの中心に変わりました。大学生がアルバイト先の料理屋で新聞紙に火をつけてと言われ、たら新聞紙を両手で広げて真ん中にチャッカマンで火を付け、火が燃えあがるのにびっくりされたという話を店主からおききしたことがあります。

 ちなみに明治天皇のご誕生の折の火種は川端道喜さんのおくどさんの火種を中山家に運び産湯を沸かしました。火の神聖さについては省略させて頂きますが、火の文化、おくどさん文化を守り、継承するサミットとして京都の風物詩となるようにして参りたいと存じます。

2、冬至の前後1週間をおくどさん週間に制定

 太陽の高度が低く地上に射すエネルギーが最も弱い日を境に、再び太陽の力を高まる日を一陽来復と申します。旧暦では前年の冬至を起点に暦をつくりはじめ旧暦11月に12支がはじまり、一年の節目となります。宮中では朔丹冬至(さくたんとうじ)という盛大な祝宴が行われておりました。中国の竈の神についての調査も行い、ワールドワイドのおくどさんサミット開催も見据え、こういう歴史的な議式や催しから、おくどさん研究会で、おくどさん週間を12月16日から12月22日の一週間と定めました。

3、末長いお付き合いをお願い申し上げます。

 本日、御参集の皆様にお願いがございます。毎年、年に1度、このようにおくどさん関係者が集まり、京都の新たな風物詩になるよう、どうぞ末永くお付き合いくださいませ。

 さて、本年エントリー頂きましたサミットの企業様、美術館様などの創業年数を全部足しますと4000年を超えました。京の食文化・家族と生活の文化を支とえてきたおくどさんに感謝、おくどさんを使い続けて頂いている皆様とおくどさんに感謝の気持ちで一杯でございます。

時代が大変革の時、今年は大変厳しい年でございました。京すずめも創立20周年の記念行事をすべて中止にしましたが、何とか第3回おくどさんサミットを開催させて頂きました。心から感謝申し上げます。皆様のお陰でございます。有難う存じます。

 

山崎家ご当主のご挨拶  山崎寿郎 様

 江戸中期に建てられた農家。ニワダイコク(ダイドコロニワの大黒柱)と七つの焚口をもつおくどさん、長者火がある屋敷です。このダイドコロニワは、建築当初から残っている部分です。口伝では築450年と言われています。この貴重な建物を、昔のままの状態で維持してこられた井上先生から、引き継がせていただき、2年をかけて修復工事を進めてきました。 

 井上家の前当主から受け継いだこのお屋敷を継承して修復保存して後世に伝えたいと思っています。京都には、大工、左官、金物屋など、大変腕の良い職人さんがいらっしゃり、そのご尽力で修復ができたことに本当に感謝しています。

 子供たちをはじめ多くの方に、資料や映像で見るだけでなく、実際に、おくどさんを使ってもらい、火や煙や匂いを感じながら体験してもらいたいと思っています。

 本日、おくどさんで炊飯する準備をし、炊飯し、後片付けをしますが、同じことを1日に3回も、大変なことを毎日やっていたということなど、昔の人の生活様式を知る機会にもなります。

日本の生活文化や生活様式を次の世代に伝える場として今後も提供していきたいと思っております。

 

ご来賓メッセージ(急遽ご欠席のため)

近畿農政局長 大坪正人 様

第三回おくどさんサミットが開催されますこと心からお慶び申し上げます。

 新型コロナウイルス禍のなか、おくどさん文化の保護・継承のため、感染対策に最大限配慮され、今日のサミットの開催を実現させた土居理事長はじめ関係者の皆様に心から敬意を表します。

 おくどさん、すなわち竈で作る食事というものは、日本の食文化の原点であります。また、その和食文化はここ京都の地で育まれ、今も成長しつづけています。

 平成25 年、和食がユネスコ無形文化遺産に登録され、世界的にも和食の価値が認められつつあるなか、和食文化の国内での伝承が十分でないという課題があります。今こそここ京都で食文化の原点であるおくどさん文化を守り、伝統を継承することの意義は大変大きいものと考えています。土居理事長はじめとする皆様のこれまでの取組に深く敬意を表します。

 農林水産省でも、関係機関・地域と連携して和食文化の伝承・保護の取組を行っていきますので、よろしくお願いします。

 最後に京すずめ文化観光研究所 おくどさん研究会の益々の御発展とおくどさん文化の継承発展、本日ご参集の皆様方の御健勝、御活躍を祈念致しまして、お祝いのメッセージとさせていただきます。

 

ご来賓のご挨拶   京都市長 門川大作 様

 皆さん、こんにちは、感動しております。井上先生には長年お世話になり、こちらには何度もお伺いしておりますが、おくどさんに火がついているのを、拝見したのは初めてです。感動しております。建物とおくどさん等、暮らしの文化を受け継ぐ決意をして頂いた山崎さん、有難うございます。

 今朝5時20分に西本願寺さんにお詣りに行って、煤払いの行事に参加して参りました。長年京都にあって当たり前の行事が実は当たり前ではなかったと感じました。もう500年の行事です。

 コロナ禍の為、開催が危ぶまれたおくどさんサミットを開催して頂き、有難うございます。京都の暮らしに息づいている文化を継承する京すずめも昨年20周年ですね。京都に生まれ受け継がれた文化を大切にすることの大切さを痛感しています。

 井上家は元は嵯峨町長をされていて、厳しい状況の中、おくどさんと建物を守ってこられました。利便性を追求する時代にあって、継続していくことの難しさ、地球環境の問題も千年を超える文化と哲学の中に解決策があるように思います。皆さん、有難うございます。

 

文化庁参事官付(食文化担当)付文化財調査官(食文化部門) 大石和男 様

 文化庁の食文化行政の推進を担当しております大石和男と申します。長年に渡り、様々な文化財を保存し活用するなかで、食文化、生活文化へも対応していくために、この数年準備を続けて参りました。その一環としまして、この4月に食文化の専門部署ができまして、私も着任した次第です。京都には様々な文化財がございまして、食に関しても多様な文化がございます。実は私も8月まで京都に住んでおりました。上賀茂にもたくさんの京野菜がございます。これらのものを文化財として活用できないかと考えております。

 今日は古民家に寄せて頂いて、いいなぁと思いました。私も上賀茂の築百年の古民家に17年程住んでおりました。家族が増えたためそこを出まして、今は大学の後輩が入れ替わり立ち替わりで住んでくれています。今は四代目の後輩が住んでいます。若い人たちが、如何に古い文化に対して関心をもっているかがわかります。

 ただし受験勉強を勝ち抜いた賢い学生であっても、おくどさんでご飯を炊けるかというと、全く別問題です。火の焚き方を教えたところ、いったん火がつくと、今度は火吹き竹をずーっと離さないんです。そこまでやったら、ご飯が真っ黒になるのに離さないのです。ひと悶着ありながら、こういったイベントもしておりました。火というのは本物の文化だと思います。

文化庁としましても、食文化の活用等、推進して参ります。

 

上賀茂の京野菜農家・八隅農園様から、すぐきを参加者全員に賜りました

 上賀茂の京野菜農家・八隅農園の農業士・八隅真人様から、すぐきのお漬物を参加者全員に真空パックにして賜りました。夏は賀茂茄子、賀茂トマト、冬はすぐきのお漬物で忙しい最中に、すぐきを持参してサミット会場までお越し頂きました。絶品のすぐきと美味しいご飯を自宅に帰って頂戴しました。有難うございました。すぐきのタルタルソースやすぐきのポテトサラダもとても美味でございました。

 

前所有者・旧井上家ご当主からキヌヒカリのお米を賜りました

 

第三回サミット参加者の皆様からの感想

 2020年12月20日第三回おくどさんサミットを大本山大覚寺(旧嵯峨御所)から徒歩3分の嵯峨野の山崎家(旧井上家)で開催させていただきました。コロナ禍に対する感染防止対策を行い無事終えることが出来ました。

参加者の皆様のご感想

  • 文化を継承させるぞという強いお気持ち、バイタリティーを感じるおくどさん愛に包まれたサミットでした。
  • 会場は、カイロなどいろいろご配慮いただいたおかげで、さほど、寒さも感じず、むしろ、参加された皆様のおくどさんに対する熱い想いに感心させられっぱなしでした。
  • おくどさんの火を見ていると両親のことを思い出して涙がでてきました。久しぶりにおくどさんの火を見て、懐かしく思いました。
  • 昨年から参加させて頂いていますが、通常の事業活動の中では、なかなかお会いできない方々と貴重なお話しをお伺いし、私個人としても多いに勉強になっています。
  • 旧井上家は個人的にもご縁が深く絶対守りたい!と思っていました。感慨深いです。ハードも大事ですが、ソフト・文化の継承が一番大事と思いました。
  • 参加者のみなさんの「おくどさん」に対する熱い思いに圧倒されいずれ全国規模の「おくどさんサミット」を開催できるのではないか、との確信を持ちました。 世界各国で「おくどさん」と同じような文化があるのかどうか存じませんが、国際レベルの「おくどさんサミット」も夢でないかも、とも思いました。
  • 無論、当面は毎年の「サミット」を着実に実施し、「おくどさん」の魅力(歴史性と文化性)をより多くの人たちに知ってもらい、しっかり世に伝えていくことが大事だと思います。
  • 当館のかまどでは今年の2月以降、炊飯できず、さみしい日が続いておりました。サミットで久方ぶりに炊きあがったつやつやのごはんを見ることができ、幸せな気持ちにさせてもらいました。来年はぜひ、この騒動が収束し、皆でごはんをともにいただける年になるよう祈るばかりです。

京すずめ文化観光研究所からのお知らせ  事務局長 大谷正美

京すずめからの案内案件として

第四回京都への恋文公募の案内をする。

2009年~昨年まで3回実施し、2021年に第四回を実施する。京都への恋文広場の中に「京都への恋文」と新たに「京都からの恋文」を新設、入賞作品の選考方法を変更し、応募者の作品⇒選考委員で賞を決定方式⇒選考広場委員と投票選考。                                           広場委員で投票枠数の作品を選考⇒HPに掲載⇒京都への恋文広場委員3点と投票者1点の合計点で選考

「京都からの恋文」新たに設ける。「京都への恋文広場」の「京都からの恋文」サイトに、皆様に投稿いただく、投稿は皆様の想い、企業アピール、賞品アピールをいただき、協賛会社HPへリンクします。京すずめから投稿を依頼。

 依頼させていただく方(投稿条件)は、京すずめ会員(年会費 ¥20,000)、賛助、協賛会員 賛助金額、協賛金額は個別に相談。 

 

謝辞 京すずめ文化観光研究所顧問 齋藤 修

 本日の第3回おくどさんサミットは、コロナ禍の厳しい最中でしたが、無事にすべての日程を終えることができました。山崎家、井上家はじめ、関係者の方々、ご出席いただきました皆様に感謝申し上げます。有難うございました。

 第1回のおくどさんサミットが始まるより前の2009年に、おくどさんの文化と歴史を学びながら、おくどさんを次代に伝え、京の食文化を後世に伝えていくということで、おくどさん研究会が発足しています。その設立趣意書にこういうくだりがあります。「おくどさんは五感を刺激し豊かな心を呼び起こす」と書かれています。

 まさに、きょうこうしてここにお集まりいただき、おくどさんを見て、触れて、火を焚いていただき、ご飯の炊ける音を聞いていただき、匂いを嗅いでいただきました。そしてもうひとつ、今回はコロナ禍ということで、炊けたご飯をお持ち帰りになって味わっていただくわけですが、こうした体験をしていただいたことによって、コロナ禍で沈んでいた心が、少しでも豊かな心になっていただけたとすれば、本日の会は成功したのではないかと思っております。

 いま「鬼滅の刃」というアニメ映画が子供さんや若い人たちに大ヒットしています。主人公の名前が竃門(かまど)丹治郎です。竈門、つまり「おくどさん」ですので、来年のおくどさんサミットには若い方も多数ご参加いただけるのではないかと期待しております。

 本日は誠に有難うございました。これで御礼のご挨拶とさせて頂きます。

 

社団法人京すずめ文化観光研究所 土居好江 2021年1月26日発行

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